【話題の本】『いけない』道尾秀介著

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 ■再読誘う意外な真相

 巧みに張り巡らされた伏線と鮮やかなトリックで読者を魅了する直木賞作家の新作ミステリー。7月の刊行で、すでに4刷8万6000部に達している。
 自殺の名所といわれる崖の近くで起こった事故を発端に、いくつもの死が連鎖する「弓投げの崖を見てはいけない」(第一章)、自殺とされた宗教団体の女性の死について調べる刑事の先輩・後輩を描く「絵の謎に気づいてはいけない」(第三章)…。謎に満ちたそれぞれの章の最後のページには、1枚の写真が掲載されている。それを見ると、隠されていたもう一つの真相が浮かび上がる。各章は独立したミステリーとして楽しめるが、終章まで読むとそれぞれの話が絡み合い、一つの長編として立ち現れる。読み進むにつれて物語の印象が変わっていき、見落とした伏線や真実を探して最初のページから読み直したくなるのだ。
 「10~20代の若い読者も多い。ツイッター上では、2度3度と読み返した、“コスパ”がいい、といった声が上がっています」と担当編集者。物語の意外な真相を知るたびに、自分の持つ先入観や固定観念の根深さに気づかされる。でも、そうやってだまされるのがまた楽しい。(文芸春秋・1500円+税)

産経新聞
2019年9月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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