【話題の本】『SPY×FAMILY(1)』遠藤達哉著

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 ■心温まる「本物の家族」の物語

 縁もゆかりもない3人が、いきなり「家族」として暮らす。夫はスパイで妻は殺し屋、おまけに娘は超能力者-。一見無茶(むちゃ)な設定に目がいきがちだが、その実は「誰にでも人に言えない秘密はある」という命題を突き詰めた漫画だ。

 舞台は架空の国オスタニア。凄腕スパイの黄昏(たそがれ)は名門校への潜入指令を果たすため、孤児のアーニャを養子に迎える。続いて、ヨルという女性と契約結婚をするのだが、この夫婦はお互いの素性を知らない。緊迫感のある物語の合間に交わされるちぐはぐなやりとりに笑えるし、娘に対する不器用な愛情表現にはグッとくる。漫画アプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載され、1巻の発行部数は35万部(電子版含む)を突破。担当編集者の林士平さんは「人間関係が希薄な今、他人同士が家族以上の存在になれるという『希望』が(読者に)響くのでは」と語る。

 それぞれの打算から「疑似家族」となった3人は、穏やかな日常といくつかの修羅場をくぐり抜け、「本物の家族」になってゆく。実親による虐待など現実社会に辛(つら)いニュースが多い中、たとえつかの間であっても、読む人の心を温めてくれる作品だ。10月4日に2巻が刊行予定。(集英社・480円+税)

 本間英士

産経新聞
2019年9月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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