【児童書】『かなしきデブ猫ちゃん』早見和真 文、かのうかりん 絵
[レビュアー] 三保谷浩輝
■被災地支援にも貢献
松山市道後の家族に飼われるオス猫「マル」は大事に育てられ、おいしいご飯ですっかりデブに。だが、やがて家に来たメス猫に家族は夢中になり、「しゃくにさわる」。ある事件をきっかけにマルは外の世界に飛び出し、愛と悲しみの大冒険が始まる。
道後から今治市・しまなみ海道、みかん畑の宇和島市、海の絶景に息をのむ愛南町、松山市ではにぎやかな繁華街や坊っちゃんスタジアムにも。愛媛県内の名所などを巡りながら情に厚い人々や、さまざまなネコとの出会い、交流をへてマルはたくましくなっていく。
小説家で、平成28年から松山市在住の早見和真氏、今治市出身のかのうかりん氏がタッグを組み、昨年、愛媛新聞で連載されたものを書籍化。全80ページと読み応えのある物語、やさしさにあふれる絵も心にしみる。
連載中に発生した西日本豪雨にもふれ、メッセージ発信のほか、おはなし会などで復興支援にも貢献。本作を通した街おこしも進行中で、地域活性化のヒントにもなりそうだ。(愛媛新聞社・1800円+税)