【気になる!】文庫 『平凡』
[レビュアー] 産経新聞社
地方に住む主婦、紀美子のもとに、高校時代の親友で、人気料理研究家の春花が訪ねてくる。春花は、紀美子の地元で2カ月前にあった火災の現場を見たいと言い出す(「平凡」)。
既婚者同士で交際中のこずえと栄一郎は、友人夫婦の海外旅行に同行。旅先で2人は度々騒動を起こしたうえ、あきれた頼みを口にする(「もうひとつ」)。
だれの胸にもあるはずの「もし、あのとき…していたら」という思い。そんな過去の岐路、選ばなかった道の先にあった「もうひとつの人生」への思いに揺れる人々を描く6編を収録。わが身を振り返り、さまざまな思いが去来する。(角田光代著、新潮文庫・520円+税)