【児童書】『青い鳥文庫ができるまで』岩貞るみこ作
[レビュアー] 渡部圭介
■ドラマチックな出版世界
昭和55年創刊、来年40年を迎える講談社の児童書レーベル「青い鳥文庫」が送る、タイトルそのままの一冊。作者で、ノンフィクション作家の岩貞るみこさんが「事実度99%以上」と書くいわばノンフィクションだ。本が書店に並ぶまでの流れを、親しみやすい小説仕立てで紹介している。
締め切りが過ぎても原稿を送ってこない作家に、焦るスタッフたち。児童書に欠かせない挿絵で苦悩したり、さまざまなトラブルに遭遇したり…。どんな本にも起こっているであろう数々の「あるある」は、一冊の本ができるまでに、多くの労苦が重ねられていることを知る。書店を含めた、本の出版にかかわるすべての人たちをいとおしく思うとともに、本そのものを大切にしたいと感じる。
文庫入りは4年前だが、多くの小学生におすすめしたい一冊。ちなみに、新聞社でも日々、本書内の編集部と似たような景色が展開する。小説のように印刷間際で確認もれに気付く、ドラマチックなことが起きていれば助かるのに…と思う。(講談社青い鳥文庫・700円+税)
渡部圭介