自動運転を含む、これからの人間とAIの関係を根本から問う警世の書

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AI倫理

『AI倫理』

著者
西垣 通 [著]/河島 茂生 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784121506672
発売日
2019/09/09
価格
946円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

人間とAIの関係を根本から問う警世の書

[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)

 18歳で運転免許を取った頃、クルマのギアはマニュアルだった。その後、オートマが当たり前になったが、今でも時々、シフトレバーを握る左手がむずむずする。最近はEV(電気自動車)もたくさん見かけるようになった。11万キロ走ってきたガソリン車から、「クルマも家電の時代ですか」と横目で眺めているうちに、今度は「自動運転」だそうだ。確かにテレビでも、ドライバーがハンドルから手を離して走るCMが繰り返し流され、メーカーは「近い現実」としてのアピールに余念がない。まさにAI(人工知能)サマサマだ。

 しかし、素朴な疑問がある。万一、自動運転車が事故を起こしたら、責任は誰がとるのだろう。ドライバーは乗っているだけで、運転していない。だからと言って免責なのか。ならば自動車メーカーや販売店が背負うのか。それともAIが責任をとってくれるのか。

 いや、それは無理だ。そもそもAIが人間に代わってクルマを運転するなら、そこで生じるはずの責任、また倫理や道徳の問題を無視することは出来ない。だが、AIをめぐる技術開発の根底にあるべき倫理については、きちんと論じられないままだと著者は言う。

 西垣通、河島茂生『AI倫理』では、「AI倫理とは何か」に始まり、近代社会における倫理思想の流れ、AIロボットと人格、生物と機械の差異など、緻密な考察が重ねられていく。自動運転の例も含め、これからの人間とAIの関係を根本から問う警世の書だ。

新潮社 週刊新潮
2019年10月17日菊見月増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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