『円谷幸吉 命の手紙』
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『円谷幸吉 命の手紙』松下茂典著
[レビュアー] 産経新聞社
昭和39年の東京五輪マラソンで銅メダリストとなった円谷幸吉は、「父上様 母上様」の書き出しで始まる有名な遺書を残し、27歳で自ら命を絶った。その幸吉は筆まめで、所属した自衛隊の関係者や親族、恋人らにたくさんの手紙を書いて近況を知らせていた。
著者は幸吉の出身地、福島県須賀川市の親族の元に残されたものなど200通の手紙を読み込み、存命の関係者から話を聞いて、悲劇の真相に迫った。快活な幸吉が次第に追い詰められていく様子に胸が苦しくなった。来年の東京五輪に向けて、選手ファーストを実現するための教訓が読み取れる。(文芸春秋・1400円+税)