<東北の本棚>日常奪った災害伝える

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

台風19号豪雨 宮城・福島・岩手の記録

『台風19号豪雨 宮城・福島・岩手の記録』

著者
河北新報社 [著]
出版社
河北新報社
ISBN
9784873413969
発売日
2019/11/22
価格
999円(税込)

<東北の本棚>日常奪った災害伝える

[レビュアー] 河北新報

 河北新報社は台風19号豪雨の報道写真をまとめた。上陸から2週間を中心にした取材は、住民が犠牲になった現場や農業などのなりわいが大きな打撃を受けている様子を伝える。地球温暖化を背景にした異常気象で河川災害のリスクが高まる中、あらゆる角度から備えを強化する必要性を感じさせる写真102枚が収められている。
 19号は10月12日から13日にかけて東日本を縦断し、宮城、福島、岩手3県で計55人が亡くなったり、行方不明になったりした(11月27日現在)。市町村で最も犠牲者が多かった宮城県丸森町の写真では、死者・行方不明者が計4人(同)だった子安地区で発生した土石流現場も掲載されている。捜索者が散乱する巨石で小さく見える一枚は、土砂災害の恐ろしさを克明に伝える。
 崩れた道路に落ちたままの乗用車、大量の土砂が流れ込んだ鉄道駅、陥没した小学校の校庭…。至る所に押し寄せた泥水が一瞬で日常を奪った各地の様子は、東日本大震災の津波を思い起こさせる。
 産業にも深い爪痕を残した。収穫直後の新米が水浸しになり、ハウス内のトマトが全滅している写真は、復興の道のりの長さを感じさせる。
 A4判64ページ。売り上げの一部は義援金になる。河北新報出版センター022(214)3811=1000円。

河北新報
2019年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク