第36回織田作之助賞が決定 窪美澄『トリニティ』が受賞

文学賞・賞

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 第36回織田作之助賞の選考会が3日に行われ、窪美澄さんの『トリニティ』(新潮社)が選ばれた。

 受賞作『トリニティ』は、1960年代、高度成長期に出版社で出会った3人の女性たちの半生を描いた長編小説。仕事、結婚、子ども、それぞれが歩んだ生き方が描かれる。

 評論家の川本三郎さんは、新潮社の読書情報誌「波」(2019年4月号)で、「多少ともあの時代に深く関わった人間としては、あの頃、われわれ男どもの隣人であった女性たちは、こんなに生き生きとしていたのか、同時に、こんな悩みを抱えていたのかと今頃になって気づいて、時折り、胸が締めつけられる思いがした」と本作を紹介している。
https://www.bookbang.jp/review/article/565291

 著者の窪美澄さんは、1965年、東京都生れ。2009年に「ミクマリ」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。2011年に『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、2012年に『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞を受賞。他の著書に『よるのふくらみ』『じっと手を見る』などがある。

 贈賞式は、来年3月2日、大阪市中央区の綿業会館で行われる。

「織田作之助賞」は、小説のみならず評論活動でも活躍し、日本文学に一時期を画した織田作之助の生誕70年を記念して1983年に創設された文学賞。対象期間中に刊行された新鋭・気鋭の作家の単行本に与えられる。第36回の選考は、いしいしんじ、重里徹也、芝井敬司、高村薫、田中和生の5氏が務めた。

 昨年は、井上荒野さんの『その話は今日はやめておきましょう』が受賞。過去には柴崎友香さんの『その街の今は』(第23回)、西加奈子さんの『通天閣』(第24回)、小山田浩子さんの『工場』(第30回)などが受賞している。

 第36回の候補作品は以下のとおり。

『森があふれる』彩瀬まる[著]河出書房新社
『キュー』上田岳弘[著]新潮社
『土に贖う』河﨑秋子[著]集英社
『トリニティ』窪美澄[著]新潮社
『傲慢と善良』辻村深月[著]朝日新聞出版

Book Bang編集部
2019年12月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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