成功者はバッターボックスに立ち続ける。人生を豊かにする30代の過ごし方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
30代は「選択」と「決断」を問われる、人生でもっとも分岐点の多い時期。『30代を無駄に生きるな』(永松茂久 著、きずな出版)の著者はそう主張しています。
そして自身が40代半ばに差しかかったいま、「成功者と呼ばれる人には、共通するひとつの事実がある」ということに気づいたのだとか。
それは、「30代を惰性で生きていない」ということ。
人は歳を重ねるたびに、良くも悪くも頑固になっていく生き物だ。まわりの大人たちや上司を見ても、なんとなく納得できることであろう。だからこそ、まずは自分をいる必要がある。
将来を見据え、このまま進んでいいのかの判断を、あらためて自分に問うてほしいのだ。(「はじめに」より)
30代の10年間は、先の人生をもっと豊かなものにするために、どうすればいいかを考え、行動するための猶予期間。
したがって、身軽に動ける30代のうちに、自分の理想の未来を明確にしておく必要があると著者は主張しています。
では、そのためには、どのような考え方のもとで動いていけばいいのでしょうか?
第1章「30代で身につけておくべき考え方、捨てるべき考え方」のなかから、2つの要点を抜き出してみたいと思います。
30代のうちに、自分の強みを知る
出版支援のコンサルティングなどに携わっているという著者は、あまりにも自分の価値に気づいていない人が多いことに驚かされるのだそうです。
たとえば、「人に誇れるものはなんですか?」と聞くと、大半の人が答えられないというのです。
しかし、彼らが誇れるものを持っていないというわけではない。自分の強みが何なのか、わかっていないだけなのだ。
自分の強みとはひと言でいえば、「自分では普通にやっていたにもかかわらず、人から驚かれたこと」である。(43ページより)
そう考えれば、誰でもひとつやふたつは、自分の強みを見つけることができるはず。にもかかわらず、「自分の強みがなんなのか」を知ることができない人が多いということ。
しかもそういう人は自分の過去に囚われており、常に人の目を気にしすぎる傾向があるのだといいます。
「いままでやったことがないから、できるわけがない」
「上には上がいる。僕なんてまだまだ…」
というような思考が根づいていて、自分を否定しがちだというのです。たしかに、誰でも自分のことは意外とわからないもの。
とはいえ、どれだけ劣悪な環境で働いていたとしても、必ずなにかしらの学びや気づきはあるはず。
そして、それらをキャッチできるか否かは、「常に自分を俯瞰してみることができるかどうか」にかかっているわけです。
大切なのは、いま、悲しんでいる自分、がんばっている自分、楽しんでいる自分、そして「自分を俯瞰的に見ることができる自分」に気づくこと。
いわば「未来の理想の自分が、いまの自分を見ている」というイメージを持ちながら、自分を見ることができればベスト。
そうやって、いまの自分と理想の自分をくらべると、「自分にはなにが足りないのか」が徐々に見えてくるもの。
そこで30代という10年の間に、その足りない部分を徹底的に埋めればいいという考え方です。(43ページより)
30代のうちに、批評側ではなく、行動する側にまわる
上司や先輩に注意されたり叱られたりすると、やはり気持ちは落ち込むもの。しかし実際のところ、上司だって怒りたくて怒っているのではないはずです。
怒るにはエネルギーがいるし、怒ったところで相手がどう変わるかわからない、「会社を辞める」なんて言い出すかもしれないし、そうなったら自分のせいになる。だから「当たり障りなく」がお約束になっている。
(中略) しかし、そんな風潮やリスクに負けず、あなたを怒ってくれる上司や先輩がいたら、まずはその指導法うんぬんを論じるより、むしろ、その上司の心意気に感謝すべきだと私は言いたい。(72ページより)
30代は、なにかと自分を高く評価してほしくなる年代。また、社会の仕組みもわかってきて、仕事にも慣れてくると、必要以上におごってしまう可能性も否定できません。
だから叱られれば反発したくもなるわけですが、怒ったり注意したりしてくれる人こそ、実は「期待してくれている人」なのだと著者。
なぜなら怒るということは、その対象である部下を「成長させたい」と思っている証拠だから。
そう思えることができれば、怒られたとしても、落ち込んだり反発する必要はないことがわかるはず。
だとすれば怒ってくれるその姿勢に感謝し、相手のことばを受け入れることに徹するべきだということです。
そしてもうひとつ、怒られ続ける人には特徴があるのだそうです。それは、「行動している」ということ。
行動する人は、そのぶん失敗もするでしょう。しかし、それは大きな評価に値するというのです。なぜならその人は、「常にバッターボックスに立っている」ということだから。
もちろん、最初は下手で当然。しかし「バッターボックスに立ち、バットを振っている人=行動している人」は、やがてヒットやホームランを出すようになるわけです。
ところが世の中には、自身が打席に立つことなく、「あのバッターはこう打たないからダメだ」というように、チャレンジしている人を評論している人が多すぎると著者は指摘しています。
しかし、それではなにも変わりません。
塁に出るチャンスは、バッターボックスに立った人にしかやってこないのだ。 人生の先輩たちの話を受け入れるということは、バッターボックスでヒットを飛ばすためのヒントを得ることだと考えよう。
そして、いざバッターボックスに立ったとき、「空振りをしてもいい。とにかく一度でも多く打席に立つんだ」 と思える勇気は、あなたを必ず光ある未来へ連れていってくれる。(74ページより)
そのため30代にとっては、いかにバッターボックスに立つかが大切なのだと著者は力説するのです。
そしてその準備こそが、知識を得ることであり、先に経験した人の話を聞き入れ、行動するということ。(71ページより)
仕事が本格化するのも、転職や結婚、出産、マイホームなど人生を左右する決断を迫られるのも、社会における野心や自分という我が出てくるのも、そしてこれまでの人間関係に別れを告げることが多い時期も、すべて30代。
だからこそ、30代をどう生きるかで、以後の人生の9割が決まると著者は記しています。
たしかにそのとおりかもしれません。そこで本書を参考にしつつ、いまから将来についてしっかりと考えてみてはいかがでしょうか。
Photo: 印南敦史
Source: きずな出版