「やめる技術」で無駄&残念な習慣をなくして効率的な仕事をしよう
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『今度こそ、やめる技術』(美崎栄一郎 著、あさ出版)で紹介されているのは、「ずっとやめたいと思っているけれど、なかなかやめられない習慣」の数々をやめるための方法。
この本では、ダメな習慣をやめる技術を、それに取り組むことによって「今よりも楽ができる」という視点から選んで紹介しています。また、いくら現状より楽になるからといって実践するのが大変だったら、取り組めません。
ですから、楽に取り組めるという点も重視しました。(「はじめに」より)
「これでいいの?」と感じてしまうほど簡単なものばかりだとはいえ、その効果はどれも実証済みなのだそうです。なぜなら著者自身が、筋金入りの「楽をしたがり」だから。
「楽をする」ということばには、さぼったり手を抜いたりするという印象があるかもしれません。
けれど、要は生きていくうえでムダなことや損なこと、残念なことをなくしていくということ。そういう意味では、「効率的」と似た意味があるというのです。
きょうは第1章「仕事の『やめる技術』」の中から、いくつかをピックアップしてみたいと思います。
自分のやり方にこだわる
「こだわる」ということばにはいいイメージがあるかもしれませんが、それは「頑固」ということでもあります。
しかし変化のスピードが早い時代においては、頑固でいていいことはあまりないはずです。
とはいっても、仕事の方法にしても普段の生活習慣にしても、慣れているやり方を変えるのは簡単ではありません。いうまでもなく、変えないほうが圧倒的に楽だから。
いつもと同じやり方であれば予測が立てやすく、経験も蓄積されているためスムーズに進めること可能。ストレスなく、効率的に行えるわけです。
しかし、仮にそれでうまくいっているとしても、いつまでもそこに固執していたら時代の波に取り残されていくのは明らか。
だからこそ、時代のスピードに合わせてさまざまなことをアップデートしていく必要があるのだといいます。
そのため著者はここで、そのために有効な方法を紹介しています。
そのひとつは、ツールやソフトなど「モノ」が関係することであれば、強制的に変える、もしくはアップデートしてしまうという発想。
以前使っていたものだったとしても、物理的に使用できないようにすれば、新しいものを使わざるを得なくなります。
しかもツールやソフトは、新しいものほど便利になっています。
最初は使いづらいと感じてもすぐに慣れ、やがて、それのない仕事や生活など考えられないというように変わっていくもの。
たとえば、スマートフォンの機種変更をしたときなどがそれにあたります。それに使うものが替われば、それに付随するやり方や習慣も自然に変わっていくもの。
同じことは、マインドにもいえるのだそうです。まずは無理にでも行動を変えてみれば、それに引っぱられるように気持ちも変化していくということ。
なお、「とことん納得しなければ動けない」という方のために、著者はもうひとつおすすめの方法を提案しています。
まず、仕事のやり方やパターン、ポリシーなど長い間、変えていないことをピックアップします。そして、もっといいやり方がないかをネット上で調べてみます。 そうすると、よりよいやり方にトライし、成果をあげた人が必ず見つかります。
ノウハウだけでなく、どのようにして変えていったかというプロセスやアドバイスを開示してくれている人がたくさんいるのです。(20~21ページより)
実際に変えてうまくいった人の声や成果に触れていけば、納得度が高まるということ。そして、納得できたら行動してみる。
そうすれば、仮にうまくいかなかったとしても、そこから得られるフィードバックは、それ以前のやり方をよりよく変えていくヒントになるというのです。
ただし、ネット上の匿名の投稿には精度の低い情報も少なくないということも事実。
その点が気になる場合は、署名記事や書籍、雑誌などを参考にするのもいいそうです。(18ページより)
モチベーションが上がらない
モチベーションはどうやっても下がるもので、常に上がりっぱなしだという人はそうそういるものではありません。
とはいえ、モチベーションが下がっているときであっても取り組まない仕事はあるものです。そんなときは、どうすればいいのでしょうか?
著者のおすすめの方法をご紹介しましょう。
タイマーをセットしてその仕事を5分間だけやるのです。 やるのはその仕事の冒頭だけ。気分よく始められるようにお菓子を用意したり、コーヒーなどの飲み物を用意したりして、スタートします。
進めていくことが目的ではなく、気乗りしない仕事に着手することが目的です。(42~43ページより)
たしかに5分間だけ取り組んでみるというのであれば、重い腰をあげることもできそうです。
著者の経験では、実際にやってみると5分以上、調子よく仕事が進み出すケースもあるのだとか。
そんな場合は、もちろんそのまま進めてしまえばいいわけです。
なぜならそれは、「モチベーションが低くて進められない」というハードルを乗り越えたということになるからです。
逆に、5分経ってもやる気が出ないのであれば、やめてしまってOK。そんなときには、途中経過をメモに残しておくことがポイントだといいます。
それをあとから見なおすことによって、「中途半端な状態になっているのが気持ち悪い→終わらせてしまいたい」という気持ちが生まれるというのです。
もう1つの方法は、別な方法でモチベーションを上げてから、その流れで気分の乗らないことに取り組んでみるというもの。
たとえば、お気に入りのノリのいい曲を聞いてテンションを上げてから、そのまま気乗りしないことに取り組んでみると、意外と嫌なことにもすんなりと入っていくことができます。(44ページより)
もちろん音楽である必要はなく、自分にとって鉄板の「なにか」を活用すればいいということです。
あるいは、好きな仕事やモチベーションの上がる仕事を先にやっておき、調子が乗ってきたところで「乗らない仕事」に切り替えるという方法も。
そうすれば、気分が乗っているので嫌な仕事もサクサク進められるわけです。
あるいは、「モチベーションの高い仕事を30分→低い仕事を5分→高い仕事をまた30分→低い仕事を5分」というように繰り返していき、調子が上がらなかった仕事に勢いがついてきたところで、そのまま一気に取り組むという手もあるでしょう。
どんな形であれ、勢いをつけてスタートすることが大切だというわけです。(42ページより
)
仕事のみならず、生活、人間関係、そして考え方に関する「やめる技術」も紹介されているため、日常生活をさまざまな角度からブラッシュアップできるはず。
読んでみて、まずはピンとくるものから取り入れてみてはいかがでしょうか?
Photo: 印南敦史
Source: あさ出版