シリコンバレーの巨人たちの思考に少しだけ近づけるかもしれない1冊

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

1兆ドルコーチ

『1兆ドルコーチ』

著者
エリック・シュミット [著]/ジョナサン・ローゼンバーグ [著]/アラン・イーグル [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784478107249
発売日
2019/11/15
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

GAFAも教えを請うた「ビルならどうする?」

[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)

 スティーブ・ジョブズをはじめ、シリコンバレー中のCEOがコーチと慕ったビル・キャンベルの教えを綴った本がAmazonの週間ビジネス書ランキングで1位を獲得するなど、好調な滑り出しを見せている。

 ビル・キャンベルはフットボールのコーチから転身し、GOコーポレーションや、インテュイットといった会社のCEOを務めた人物だ。スティーブ・ジョブズがアップルに復帰してからは、アップルの取締役も務め、彼の唯一無二の親友、メンター、コーチでもあった。また創業時からグーグルの経営陣をコーチングし、グーグル全体に深い影響力を残している。さらにその間にシリコンバレー中のCEOをコーチしたという。

 2016年に亡くなったビルの追悼式には、グーグルのエリック・シュミット、セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ。アップルのティム・クック。アマゾンのジェフ・ベゾス。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、シェリル・サンドバーグなど、シリコンバレーの名だたる成功者たちが参列した。彼らに絶大な影響を与えたコーチの教えをまとめたのは、エリック・シュミットをはじめとする『How Google Works』(日経ビジネス人文庫)を執筆したチームである。

 ビルのコーチングで特徴的なのは、ビジネスに愛を持ち込んだことだ。「人を大切にするには、人に関心を持たなくてはならない」という信条をもとに、どんな人にも敬意をもって接し、名前を覚え、温かい言葉をかけた。彼らの家族のことを気にかけ、行動でそれを示した。信頼を最重要の価値として、信頼のおける相手としかつきあわず、コーチャブルな資質のある人を求めた。コーチャブルな資質とは「正直さ」と、「謙虚さ」、「あきらめず努力を厭わない姿勢」、「つねに学ぼうとする意欲」である。これらは成長をする上で不可欠なものだろう。

 本書を読み、彼のコーチングのエッセンスを浴びることで、ビル・キャンベル的な視点を身に着けられるだろう。また「ビルならどうする?」と考えることで、シリコンバレーの巨人たちの思考に少しだけ近づけるかもしれない。

新潮社 週刊新潮
2019年12月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク