「ミステリが読みたい!」 今年の1位は伊吹亜門『刀と傘 明治京洛推理帖』 海外編は『メインテーマは殺人』

文学賞・賞

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 早川書房発行の「ミステリマガジン」(2020年1月号)が発売され、ミステリが読みたい! 2020年版が発表された。

 国内編で1位となったのは、伊吹亜門さんの『刀と傘 明治京洛推理帖』(東京創元社)。慶応三年、新政府と旧幕府の対立に揺れる幕末の京都を舞台に、若き尾張藩士・鹿野師光と、後に初代司法卿となり、近代日本の司法制度の礎を築く人物・江藤新平が、維新志士の怪死、密室状況で発見される刺殺体、処刑直前に毒殺された囚人など、動乱期の陰で生まれた不可解な謎に挑むミステリー。

 書評家の村上貴史さんは、「三年で五篇というじっくりしたペースで仕上げられただけに、出来映えはすこぶるよい」と絶賛。「期待を込めて、あえてハードルをあげるようなことを書くが、本書は、山田風太郎が明治を舞台に描いた傑作ミステリ群と共通する愉しさを与えてくれたのである。ちょっくら地味な題名だが、それを含めて凄味は抜群だ」(小説新潮・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/563773

 著者の伊吹さんは、1991年愛知県生まれ。同志社大学卒。在学中は同志社ミステリ研究会に所属。2015年に「監獄舎の殺人」で第12回ミステリーズ!新人賞を最年少で受賞する。日本推理作家協会ならびに本格ミステリ作家クラブの年刊アンソロジーにも選ばれ、新人のデビュー作としては破格の評価を受けた。同作を連作化した『刀と傘 明治京洛推理帖』で単行本デビュー。今年5月に第19回本格ミステリ大賞を受賞している。

 また、海外編では、昨年の年末ミステリ・ランキングや賞で軒並み1位に選ばれ7冠を達成した『カササギ殺人事件』の著者・アンソニー・ホロヴィッツさんの『メインテーマは殺人』(東京創元社)が1位に選ばれている。本作は自らの葬儀の手配をした資産家の婦人が絞殺される事件を著者自身が元刑事のホーソーンと共に捜査し、本にするという犯人当てミステリ。作者本人の遍歴が盛り込まれつつ、アガサ・クリスティ仕込みのフェアな謎解きが味わうことができる。

 著者のアンソニー・ホロヴィッツさんは、1955年英国ロンドン生まれの小説家・脚本家。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。2014年にはイアン・フレミング財団に依頼されたジェームズ・ボンドシリーズの新作『007 逆襲のトリガー』を執筆している。

「ミステリが読みたい! 2020年版」は、書評家、作家、翻訳家、書店員といったミステリのプロフェッショナルが、海外作品・国内作品のベスト10を選出。その結果を集計してランキングにしている。

 そのほか、「ミステリマガジン」では、文芸、SF、ミステリ、ライトノベル、コミックなど各ジャンルの総評や皆川博子さんのインタビューなどが掲載されている。

【国内作品ランキング】
第1位『刀と傘 明治京洛推理帖』伊吹亜門
第2位『ノースライト』横山秀夫
第3位『魔眼の匣の殺人』今村昌弘
第4位『罪の轍』奥田英朗
第5位『紅蓮館の殺人』阿津川辰海
第6位『マーダーズ』長浦京
第7位『いけない』道尾秀介
第8位『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人
第9位『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき
第10位『或るエジプト十字架の謎』柄刀一
第11位『沈黙のパレード』東野圭吾
第12位『本と鍵の季節』米澤穂信
第13位『我らが少女A』高村薫
第14位『殺人鬼がもう一人』若竹七海
第15位『欺す衆生』月村了衛
第15位『法月綸太郎の消息』法月綸太郎
第17位『Iの悲劇』米澤穂信
第17位『カナダ金貨の謎』有栖川有栖
第19位『早朝始発の殺風景』青崎有吾
第20位『Blue』葉真中顕

【海外作品ランキング】
第1位『メインテーマは殺人』アンソニー・ホロヴィッツ
第2位『ザ・ボーダー』ドン・ウィンズロウ
第3位『ディオゲネス変奏曲』』陳浩基
第4位『国語教師』ユーディト・W・タシュラー
第5位『ブルーバード、ブルーバード』』アッティカ・ロック
第6位『休日はコーヒーショップで謎解きを』ロバート・ロプレスティ
第7位『ケイトが恐れるすべて』ピーター・スワンソン
第8位『イヴリン嬢は七回殺される』スチュアート・タートン
第9位『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー
第10位『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー
第11位『死者の国』』ジャン=クリストフ・グランジェ
第12位『名探偵の密室』クリス・マクジョージ
第13位『償いの雪が降る』アレン・エスケンス
第14位『ひとり旅立つ少年よ』ボストン・テラン
第15位『種の起源』』チョン・ユジョン
第16位『カルカッタの殺人』』アビール・ムカジー
第17位『座席ナンバー7Aの恐怖』セバスチャン・フィツェック
第18位『危険な弁護士』ジョン・グリシャム
第19位『11月に去りし者』ルー・バーニー
第20位『カッコーの歌』フランシス・ハーディング

Book Bang編集部
2019年12月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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