今すぐやめたい。「敏感すぎる人(HSP)」に不適切な5つのトレーニング法

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繊細すぎる人のための自分を守る声の出し方

『繊細すぎる人のための自分を守る声の出し方』

著者
司拓也 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784023318557
発売日
2019/12/20
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

今すぐやめたい。「敏感すぎる人(HSP)」に不適切な5つのトレーニング法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ボイストレーナー、メンタルトレーナーである『繊細すぎる人のための 自分を守る声の出し方』(司 拓也 著、朝日新聞出版)の著者は、HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれるタイプの人々に注目しているのだとか。

HSPとは、生まれつき感受性が強く、何事に対しても敏感にとらえがちな人々のことです。

(中略) HSPの人は、内向的で控えめ。普通の人よりも傷つきやすく、自己評価が低い傾向があるそうです。 そして、じっくり深く物事を考えるので、一見すると「不器用」に見えることも多いのです。(「はじめに」より)

敏感だからこそ、他人のちょっとしたひとことに傷つきやすく、繊細であるがゆえに自己評価が低くなってしまうということ。

しかし、仮に人前で話すことに緊張感や苦手意識を持ち続けていたとしても、声や話し方で上手に隠すことができれば大丈夫。

そう考えた末に著者がつくりあげたのが、「ポーカーボイス」と、それを最大限に生かすための「ポーカートーク」「ポーカーメンタル」

上につく「ポーカー」とは「ポーカーフェイス」のポーカーで、著者の造語だそうです。

「ポーカーボイス」を使えば、人前で話をするときに、ドキドキしていることを悟られにくくなる。その結果、「自信がありそうな人だな」「落ち着いている人だな」と周囲から思われるようになります。(「はじめに」より)

しかし本題に入る前に、まずは「避けたいアプローチ」を気にしておきたいところ。

そこできょうは第2章「当たり前に使われているあのアプローチは、繊細な人には逆効果!」のなかから、「やめるべき5つのトレーニング」をご紹介したいと思います。

著者は、過去20年におよぶメンタルトレーナー歴のなかで、HSPの方々の苦しさを取り除くためには不適切なトレーニング法を数多く見てきたというのです。

×大きな声をとにかく出し続ける練習法

大きな声を無理やり出し、身体をたくさん動かし、ハイテンションにして心を強くさせるというようなトレーニング法があります。

体育会系の風土がある企業などでは、いまでも行われているものです。

一時的には気分がよくなるため、たしかにその場では大きな声が出せるようになるでしょう。しかし短期的にテンションがアップするだけなので、長続きはしないそうです。

一晩寝ると、もとの自分に逆戻りしてしまうというのです。(59ページより)

×過去のトラウマを探る療法

「ビクビクしたり不安を抱えたりすることの原因は、子ども時代のトラウマである」として、過去をさかのぼって原因を探る療法。

子ども時代のトラウマ経験が、その後の人生に多かれ少なかれ影響を与えることは事実。

しかし問題は、「トラウマがあるからうまくいかない」「このトラウマを取り除いたらうまくいく」と思い込んでいること

著者も、トラウマさえなくなれば人生はうまくいき、行動できると信じ、トラウマを外すことを目的としたセミナーを渡り歩いている人をたくさん見てきたといいます。

でも実際には、さまざまなトラウマ的事象を経験した人のなかにも、トラウマに負けないメンタルを持っている人はたくさんいます。

トラウマの役割とは、あなた自身を守るために発動する警告ブザーに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもありません。

そのトラウマの正体を暴き出して、引っ掻き回し、新たな意味づけをしようとする必要はありません。(61ページより)

なぜなら、いま抱えている問題の解決に直接役に立つわけではないからです。(60ページより)

×コミュニティ・グループセラピー

たとえば吃音に悩んでいる方が、なんらかのコミュニティに入ることで吃音によるストレスを軽減させ、吃音が軽減したというようなケースはあるものです。

ただし、すべてがそうだと言い切れないのも事実。

吃音を受容されるコミュニティにいることで、逆に吃音が強化される人もいて当然であるわけで、つまり症状と改善策は人それぞれだということ。

必ずしも、コミュニティ・グループセラピーですべてが解決できるわけではないのです。(61ページより)

×恐怖を感じる体験をさせて、実は大丈夫だと認識させる療法(暴露療法)

多少の効果を得られる人がいるものの、著者が見てきた人の多くは、この方法を試したことで逆に強い恐怖感情を持ってしまったのだそうです。

おすすめしない理由は、脳の仕組みです。 脳の仕組み上、恐怖状況を何度か体験するうちに、怖いという感情が薄れていくことにはなりません。

逆に恐怖を感じるネガティブな神経細胞をつくり出すことになります。恐怖と不安の強化です。(63ページより)

不安を感じないリラックスした環境を整え、うまくいく体験を繰り返し経験することのほうが、遥かに効果があるということです。(63ページより)

×無意味なポジティブシンキング

マイナスの出来事を、無理やりプラスの出来事として解釈する方法。たとえば雨が降ったとき、「なんだか憂鬱だな。いや、憂鬱だと思ってはいけない。ポジティブに、プラス思考で考えなくてはいけない」と考えてしまうようなアプローチです。

この方法の問題は、憂鬱の感情を否定してしまうこと。それは、「憂鬱というマイナスの感情が生まれたときには、ポジティブな意味づけをすればプラスの感情に変わる」と思い込んでいる状態です。

しかし、そんな状態が癖になってしまうと、なにか問題が発生するたび、感情に嘘をついて事実を改ざんすることが当たり前になっていくというのです。

つまり自分の感情に嘘をつくことになるため、いつまでたっても自分を信じることができず、自信がつかないわけです。(64ページより)

以後の章では、「ポーカーボイス」「ポーカートーク」「ポーカーメンタル」それぞれの基本と活用法がわかりやすく解説されます。

実践しやすいものばかりなので、すぐに役立てられることでしょう。

Photo: 印南敦史

Source: 朝日新聞出版

メディアジーン lifehacker
2020年1月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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