「いいね!」しただけなのに……あなたのスマホがとにかく危ない

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昨年、特に取りざたされたスマホやSNSを入口とした犯罪。
「スマホの使い方ぐらいわかってる」「自分はSNSをやらないから大丈夫」というように、対岸の火事だと思われていないでしょうか?

しかし、その気の緩みこそ、悪意のある人間につけ込まれる原因となります。

みなさんも、少年犯罪において報道では名前が隠されているのにネット上では実名が特定されていたり、SNSの投稿をきっかけにストーカー被害が起きたというニュースを見ると、「どうやって、個人情報を突き止めたの?」と不思議に思われないでしょうか。

無意識のうちに、自らのスマホ操作や家族のSNS投稿によって、犯罪者にヒントを与えてしまっているケースは本当に多いのです。

そこで今回は、「スマホ・SNSのセキュリティ対策」から「リテラシー」「子どもへのスマホの持たせ方」まで解説した本『あなたのスマホがとにかく危ない~元捜査一課が教える SNS、デジタル犯罪から身を守る方法~』より、SNS投稿に潜む危険についての項目から、特別に一部を抜粋して紹介します。

SNS投稿、どこに危険がある?

個人情報が特定される“やりがちな危ない投稿例”

炎上が起きたときに動き出す「特定班」と呼ばれる人たちや、好みの人の写真をSNSで見つけてはそこから詮索をし出すストーカーは、ちょっとした隙も見逃してはくれません。

大っぴらには個人情報を開示していない匿名アカウントであったとしても、それこそ断片的な投稿を繋ぎ合わせて、対象者の個人情報を特定しにかかります。

では、どんな投稿が問題なのかというと、SNSで検索をする彼らは、たとえば以下のような方法で、狙う人物の個人情報を拾っていっています。

●ターゲットが、制服やジャージ姿の写真をアップしていれば、学校(会社)を特定

●アップした投稿の中で、遊びに行った場所、お祭りやイルミネーションに地域性があれば、おおよその生活エリアを割り出し

●プロフィール欄や友人からのコメントで誕生日がわかれば、それに絡めたパスワードでSNSにログインできないか挑戦

●ターゲットのフォロワーが「××、かわいい」等の名前を載せたリプライをターゲットにしていれば、匿名アカウントであっても名前が判明

●交通情報を活用。「人身事故で遅延」といった投稿から、ターゲットの使用路線を特定

●気象や災害情報を活用。「近くで雷落」「××川の水位やばい。近いから怖い」といった投稿があれば、雷の発生位置や川沿いを調べ、使用路線等の情報も絡めて居住地を絞り込み

●ニュースになるような事件や事故の情報を活用。「ニュースでやってる事件現場。家のすぐそば。怖い」といった投稿からも居住地域を特定

●道路や建物の特徴、電信柱やマンホールなど風景写真に写り込んでいる住所や地域から、居住地や行動範囲を特定

●投稿動画では、背景に見える景色と聞こえてくる音に注目。たとえば、景色で地域を特定し、電車の音の間隔で沿線と駅を推定

●ターゲットの居住地域が絞り込めたらグーグルマップのストリートビューで一帯を歩きまわり、表札などから対象者の自宅を特定(表札のモザイク処理は完璧ではないため)

――いかがでしょうか。ここに記載したのはあくまで一例ですが、ほんのわずかな痕跡でも特定班には手掛かりになります。中には、子ども本人ではなく、父親がアップした写真が原因で、娘がストーカー被害に遭ったケースもあるほどです。

また、自宅まで特定できなくても、学校や勤務先をつかめば、そこで待ち伏せされて後を付けられる場合もあります。

安全面から言えば、自撮り写真を始めとした個人情報のSNS投稿は、控えるべき最も大事なことの一つです。どうしてもアップする場合には、友達限定公開にするのはもちろん、画質やサイズを落としたり、背景にぼかしを入れたり、と必ず対策をしましょう。

「顔にスタンプをして隠せばあとは平気」と思っている人も多いですが、鏡や窓、はたまた鍋の水面まで、どこかに反射して情報が写り込むこともありますから、油断は禁物です。

その気軽な「いいね!」にもリスクは潜んでいる

無防備なSNS投稿の危険性が叫ばれている昨今、上記のような知識をお持ちの方は少なくないでしょう。しかし、そんな人でも意外と知らないのが「いいね!」に潜む危険です。

たとえば、あなた自身は個人情報の漏洩に気をつけて投稿していたとしましょう。あなたの写真を見かけて興味を持った人(=ストーカー)は、あなたの投稿やプロフィール情報からだけでは、住まいや勤め先などを特定できなかったとします。

ところが、ストーカーはそれだけでは諦めません。たとえば、更なる詮索の一つが、あなたの投稿につけられた「いいね!」。

「いいね!」をした一人ひとりのページを追えば、学校を特定できる制服や学園祭での写真が見つかったり、プロフィール情報に同じ勤め先の人が多かったり、友人たちの居住地域に××県の人が多いことが判明したり、とあなたに迫っていくことができるのです。

こうしたことを避けるには、先程同様アカウントに鍵をかけるのはもちろん、友達リストやフォロワーリストが友達からでも覗けないように、非公開設定にしたほうがいいでしょう。

中でも学生の場合は、学校がわかるだけでも使用する電車の路線や、居住地域が大方しぼれてきてしまいます。お子さんをお持ちの親御さんは、特に気をつけてください。

その他にも、スマホロックが脆弱な方、ロックだけで安心して乗っ取りに遭う方、鍵アカウントでも簡単に見ず知らずの友達申請を承認してしまい被害に遭う方、地図アプリから1分単位の行動がバレバレな方など、スマホ・SNSに慣れていても、知らずしらずのうちに、恐怖に片足を突っ込んでしまっている人はたくさんいます。

ぜひ、まずはみなさんがリテラシーをつけていただき、加えて家族など身の回りの方にも危険性と対策を伝えていっていただけると、嬉しく思います。

元埼玉県警捜査一課デジタル捜査班班長 佐々木成三

祥伝社
2020年3月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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