メンタリストに学ぶ「大勢の前でも緊張しない唯一の方法」――「ありのままで」が大事

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photo by Anton Gvozdikov/Adobe Stock

大勢を前にしてスピーチやプレゼンをするときは、緊張してどうしても早口になってしまうものです。聴衆には神経質でせわしない印象を与えてしまい、話の内容も伝わりにくく、またそんな会場の雰囲気を過敏に感じ取ってますます緊張してしまう……。落ち着いて、ゆっくり話すにはどうすればいいのでしょうか。

ロミオ・ロドリゲス Jr.さんは、『メンタリズム 最強の講義』の著書を持つメンタリスト。堂々とした心理術パフォーマンスで聴衆を驚かせる、話術のスペシャリストでもあります。ロミオさんは同書で「大勢の前でも緊張せずに話す、唯一の方法」を紹介しています。早速見てみましょう。

(書籍URL:https://www.njg.co.jp/book/9784534057709/)

なぜ早口になるのか?

緊張すると早口になるのは、心理学的に説明できるそうです(「不安のディスクレパンシー活性化モデル」といいます)。「2者間の会話は、2者の不安レベルのギャップによって促進される」というもので、要するに「不安が高い人と低い人」の会話は不安の度合いが同じ人たちの会話より饒舌で、早口になる、というのです。

聴衆は、どんな話が聞けるか期待したり、無関心だったりしますが、不安を感じることはありません。一方大勢の前でスピーチをする話者は、自分の話が受け入れられるかどうか不安を感じ、緊張して、早口になるのです。より多くしゃべることで不安感を埋める、という感じでしょうか。

緊張したときの早口を治したい人は「とにかくゆっくり話すようにする」「句読点を意識する」「口を大きく開けて話す」などの対策をとりますが、ロミオさんによれば、いずれも緊張状態では意識できないので効果はないそうです。

つまり早口にならないためには、緊張状態を取り去る以外に方法はないのです。

緊張しない唯一の方法とは?

さて、緊張しないためにはどうするか。ロミオさんが「唯一の方法」としてすすめているのが、「等身大の自分で勝負する」ことです。

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きっとあなたにも緊張をする場面が何度もあったと思います。そのときのことをよく思い出してほしいのですが、きっと自分の実力以上のことをやろうとしていたはずです。緊張は、自分の器を無理に超えようとしたときに起こります。ですから、飾らずに今の「自分のまま」で勝負しましょう。それが唯一、緊張をしない方法なのです(140ページ)。

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ロミオさんも、メンタリズムのステージではとにかく「自然体」でパフォーマンスをします。弟子たちにも「そのままの自分の言葉を話せ」「カッコつけるな」と教えているそうです。「できると思われたい」「ウケたい」などの邪念を捨て、「ありのままで」勝負する。そんな思い切りが必要なのですね。

場を支配する?

さて、ロミオさんがパフォーマンスをするときに「等身大でいること」以上に優先していることがあります。それは「場の支配力を持つ」ということです。

場を支配するなんて難易度が高そうですが、私たちのスピーチやプレゼンにも取り入れられそうなので紹介します。

「場を支配する」ためには2つのことを意識します。その2つとは「脱力感」と「圧倒的な自信」です。これらのバランスをとって表現することが、聴衆の興味を惹きつけるカギだそうです。

スポーツや演劇でもそうですが、いいパフォーマンスをする人は肩の力が抜けていて、見た目以上に「脱力」しています。無駄な力は体のスムーズな動きを妨げ、見ている側にも緊張が伝わります。ただし、あまりに脱力し過ぎるとただのやる気のない人物に見えるので、適度なリラックス感を心がけましょう。

早口の意外な効能

2つめの「圧倒的な自信」なんて、あったら苦労しません! という声が聞こえてきますが、それほど心配はなさそうです。要は自信がありそうに見えれば良いということ。それには「ボディーランゲージ」と「声の使い方」がポイントです。

コミュニケーションにおいて表情やジェスチャーといった視覚情報は、伝わる情報のうちの55%を占めるといいます。その意味でボディーランゲージはとても重要です。効果的なボディーランゲージを身につけるには演劇を学ぶのが一番いいそうですが、ジェスチャーの示す心理的な意味を把握して活用するだけで十分です。有力な政治家やプレゼンターがよくやるしぐさの意味を調べて、真似してみるのもいいでしょう。

また、「声」については、抑揚をつけることがもっとも大事です。物語を朗読する役者の話し方などは参考になります。重要なポイントではゆっくり大きく話し、流すところは普通に話します。

さて、ここで冒頭の「早口」が再登場します。実は「早口で話す」ことはマイナス面ばかりではありません。熟練したスピーカーやメンタリストには、むしろ早口の人が多いそうです。聞き手は語尾で話の内容をある程度把握するため、ゆっくり話すことのメリットはそれほどないのだとか。

ならばむしろ、早口をベースにして、本当に重要なところだけを「ゆっくり大きく」話すように抑揚をつけると、より印象的なスピーチにすることができそうです。

メンタリズムは(トリックも含みますが)心理学的エビデンスをベースにした心理術であり、ただのパフォーマンスとは違うものです。本書はメンタリズムの歴史や本質から、コミュニケーションや恋愛などにも使える実践的テクニックまでを解説している点で読み応え十分。ぜひ本書で、メンタリズムの深い世界に触れてみてください。

日本実業出版社
2020年3月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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