1を100に。ビジネスアイデアや戦略を実行に移す「畳み人」というスキル

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「畳み人」という選択

『「畳み人」という選択』

著者
設楽悠介 [著]
出版社
プレジデント社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784833423502
発売日
2020/02/28
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

1を100に。ビジネスアイデアや戦略を実行に移す「畳み人」というスキル

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「畳み人」という選択 「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書』(設楽悠介 著、プレジデント社)の著者は、出版社の幻冬舎でブロックチェーン専門メディア「あたらしい経済」の編集長を務めている人物。

また、漫画出版社の幻冬舎コミックスやクラウドファンディング出版のエクソダスなど、関連会社の取締役も兼務しているそうです。

さらには個人活動として、ボイスメディア“Voicy”でビジネスパーソン向けの「風呂敷畳み人ラジオ」を配信し、他にもイベント登壇、メディア出演などもしているといいます。

いかにも活躍している印象がありますが、かつてはやりたい仕事ができなかったのだと過去を振り返っています。

なのにいま、やりたい仕事ができるようになったのは、「畳み人」という働き方を選択してきたから。

「畳み人」というのは、大風呂敷を広げたようなビジネスアイデアを、きちんとした形に畳める人というたとえを基にした造語です。

経営者やプロジェクトリーダーの突飛なビジネスアイデアを着実に実行し、形にできる人のことを指します。(「はじめに」より)

そう語る著者が確信しているのは、やりたい仕事ができるようになるための最良のルートは、この畳み人のスキル(=畳む技術)を身につけることだということ。

そこで本書に、著者自身が仕事を始めてから約20年の間に学んできたノウハウを詰め込んでいるわけです。

きょうは第1章「畳み人が求められている理由」に注目し、「畳み人」についての基本的な考え方を確認してみたいと思います。

「風呂敷畳み人」とはなにか?

仮に「突飛なアイデア」という大風呂敷を広げる経営者やリーダーを「広げ人」とするなら、著者が定義したい「畳み人」は仕事のアイデアを形にし、着実に実行に移す仕事人のこと

リーダーに対する「名参謀」や「右腕」のような存在だといいます。

広げ人が仕事のアイデアをゼロから生み出す「0→1」の人なら、畳み人の仕事はその1を10や100にすること

会社のポジションで言えば、CEOが広げ人でCOO(Chief Operating Officer)が畳み人。

あるいは会社内の新規事業であれば、プロジェクトリーダーが広げ人で、それをサポートして現場メンバーとリーダーをつなぐNo.2のポジションが「畳み人」というイメージだそうです。

社長やプロジェクトリーダーである広げ人のいちばん近くで一緒にアイデアを組み立て、実行するための戦略を練り、チームを組成して育て、社内外の根回しもし、その事業全体を牽引して成功に導く役割。

世間的には「アイデアを出した人がすばらしい」と、広げ人ばかりが評価されがち。

しかし著者は、広げ人以上に、アイデアをきちんと実行させられる畳み人を評価しているのだといいます。

有名なアメリカの経営学者であるピーター・ドラッカーもこう言っています。 “Strategy is a commodity, execution in an art.” (戦略はコモディティであり、実行こそアートである)

仕事においてアイデアや戦略は消費されるコモディティ(日用品)のようなものですが、それを実行することはアートのように価値があるとドラッカーは言っているのです。

この言葉を借りると、本来の意味で仕事の進化が問われるのは、「アイデアや戦略をいかに実現するか」ということ。アイデアは実行されてこそ意味を持ち、ビジネスでの大きなポイントになるのです。(19~20ページより)

そういう意味でも、アイデアを実行に移す「畳み人」はビジネスに欠かせない存在であるということ。

また、そのビジネスを「畳む技術」も、多くの現場に求められる重要なスキルだといいます。

著者によれば、畳む技術を身につけることは、バランスの良い仕事の筋力をつくること。筋力があれば、仕事を行ううえで多くのチャンスをものにできるわけです。(18ページより)

なぜ「畳み人」が求められているのか?

著者は多くの経営者やプロジェクトリーダーと接するなかで、「いいアイデアをもいついても、プロジェクトがなかなか進まない」という悩みをよく聞くそうです。

アイデアを提案しても、それを具体的に進めることのできるメンバーがなかなか出てこないということ。

一方、現場のメンバーに話を聞くと、返ってくるのは「プロジェクトをどうやって進めたらいいのかわからない」「聞くたびに(上層部の)意見がコロコロ変わるので実現できない」などの悩みなのだとか。

つまり実行部隊であるべき現場には、アイデアを実行に移すための実行力や経験、さらにはそれを指揮する人材が不足しているということです。

プロジェクトを遂行するうえでは、予算組、社内外を含むメンバー集め、スケジュールの段取り、場合によっては資金集め、法律やルールなども確認したうえで、実行までの総合的な戦略を立てることが必要。

しかしアイデアを立案した広げ人が、それらすべてをこなすことは現実的に困難です。

だからこそ、アイデアを思いついて実行したいと思う経営者やリーダーにとって、それらの細かな仕事を着実に実行に移せる「畳み人」は貴重な存在です。

畳み人は停滞中のプロジェクトを実行に移せる能力を持っているため、どの企業もほしがる即戦力の“スター人材”と言ってもいいと思います。(23ページより)

事実、著者は畳み人と呼ばれるようになってから、新規事業を展開する企業やスタートアップの経営者などから、「畳み人を探している」という相談をよく受けるのだといいます。

また、いままで多くの仕事をしてきた結果、「うまくいっているプロジェクトには、必ずと言っていいほど畳み人の存在がある」と感じるのだそうです。

画期的なアイデアを出す広げ人のかたわらで、そのアイデアを実現可能なものにまで昇華させるのが畳み人の役割。

アイデアを実現させるスキルの高さが、あらゆる会社で重宝されているということです。

グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンといった有名企業はもちろん、日本のリーディングカンパニーのトップの傍にも名参謀がいます。

スティーブ・ジョブズ氏と共にピクサーを立て直したローレンス・レビー氏、ホンダの創業者である本田宗一郎氏を支えた藤澤武夫氏、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏を支えた井深大氏、任天堂の中興の祖である山内溥氏のアイデアを具現化させた岩田聡氏……このように成長企業には、必ずと言っていいほど畳み人が存在するのです。(24~25ページより)

いってみれば周知の「天才」や「名経営者」と呼ばれる人たちが評価されるようになったのは、そのすばらしいアイデアをかたわらで着実に実行する参謀としての畳み人がいたからだということです。(22ページより)

こうした考え方に基づき、本書では畳み人になるための重要事項やマネジメント術などがわかりやすくまとめられています。

ビジネスチャンスが訪れたときにしっかりジャンプできる大声を整えておくという意味でも、参考にする価値がありそうです。

Photo: 印南敦史

Source: プレジデント社

メディアジーン lifehacker
2020年4月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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