2020年本屋大賞は凪良ゆう『流浪の月』 常識とはなにか、普通とはなにかを考えさせてくれる作品

文学賞・賞

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 全国の書店員が「今いちばん売りたい本」を選ぶ「2020年本屋大賞」が7日に発表され、凪良ゆうさんの『流浪の月』(東京創元社)が受賞した。凪良さんは本作で今年はじめてノミネート作に挙がり、大賞に輝いた。

 受賞作『流浪の月』は、ボーイズラブ作家として10年以上のキャリアを持つ凪良ゆうさんの一般文芸作品。誘拐事件の被害者と加害者として社会から一方的に糾弾された少女と大学生の二人が、数年後に再会し、恋愛とも友情ともとれない複雑な関係性を築いていく、常識とはなにか、普通とはなにかを考えさせてくれる作品だ。

 書評家の石井千湖さんは二人の関係について、「ふたりが恋に落ちたとしたら、ありきたりで幼稚な話になっただろう。しかし文と更紗は恋人でも友達でも敵味方でもない。本書は一対一の人間関係に新たな可能性を切り開いているのだ」と解説し、「断片的な情報をもとに人間をわかりやすい型にはめこむ世間に、更紗が最後通牒をつきつける三〇二ページは、読んでいて霧が晴れるような心地がした」と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/587302

 凪良さんは滋賀県生まれ。2007年に長編『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビュー。以降、各社でボーイズラブ(BL)作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には初の非BL作品『神さまのビオトープ』を発表、作風を広げた。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『美しい彼』『わたしの美しい庭』などがある。

 その他、「翻訳小説部門」は、矢島暁子さん翻訳のソン・ウォンピョン『アーモンド』(祥伝社)が受賞、「発掘部門」は、土屋賢二さんの『無理難題が多すぎる』(文藝春秋)が「超発掘本!」に輝いた。

 本屋大賞は今年で17回目。2018年12月1日~2019年11月30日に刊行された日本のオリジナル小説を対象に実施され、全国の書店で働く書店員による投票で決める。今回は全国477書店、書店員586人の一次投票により、集計の結果、以下の10作がノミネートされた。

『線は、僕を描く』砥上裕將[著]講談社
『店長がバカすぎて』早見和真[著]角川春樹事務所
『夏物語』川上未映子[著]文藝春秋
『熱源』川越宗一[著]文藝春秋
『ノースライト』横山秀夫[著]新潮社
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人[著]双葉社
『ムゲンのi』知念実希人[著]双葉社
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼[著]講談社
『ライオンのおやつ』小川糸[著]ポプラ社
『流浪の月』凪良ゆう[著]東京創元社

 昨年は、名字が4回変わり、父親が3人、母親が2人いる17歳の森宮優子の人生を描いた瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)が大賞を受賞。過去には小川洋子さんの『博士の愛した数式』(第1回)、東川篤哉さんの『謎解きはディナーのあとで』(第8回)、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』(第14回)などが受賞しており、大賞作品の多くが映像化されている。

Book Bang編集部
2020年4月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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