【話題の本】『ザ・チェーン 連鎖誘拐 上・下』 実力派の復帰第1作に騒然

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 「娘さんを誘拐した」

 衝撃の電話で事件は幕を開ける。シングル・マザーのレイチェルは、乳がんの治療を終えて社会復帰する矢先だった。犯人が求めているのは、身代金と他人の子供を誘拐すること。犯人もまた、息子をさらわれ、人質に取られている。謎の人物が仕組んだ連鎖誘拐システム「チェーン」に組み込まれた主人公。娘を救うには、被害者から加害者にもならねばならない。母娘の運命は−。

 娘を思う母の行動がもたらすスリリングな展開に、ツイッターで「一気読みした」との投稿が相次いだ。

 マッキンティは英国北アイルランド出身。オックスフォード大学で哲学などを学び、さまざまな職業を経て作家となった。警察小説「ショーン・ダフィ」シリーズで知られ、米ミステリー界で最も権威のあるエドガー賞の最優秀ペーパーバック賞を受賞したほどの実力派だ。

 だが、小説執筆の収入が労働対価に合わないという理由で一時、ウーバーのタクシードライバーに転職したという。その才能を惜しんだ米ミステリー界の巨匠、ドン・ウィンズロウの支援を受けて執筆し、復帰第1作となったのが、本作だ。(エイドリアン・マッキンティ著、鈴木恵訳/早川書房・ 各780円+税)

 中島高幸

産経新聞
2020年5月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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