『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹著

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猫を棄てる 父親について語るとき

『猫を棄てる 父親について語るとき』

著者
村上 春樹 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163911939
発売日
2020/04/23
価格
1,320円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹著

[レビュアー] 産経新聞社

 世界的な人気作家が亡き父の苛烈な従軍体験を克明につづり、雑誌掲載時から反響を呼んだエッセー。親子で飼い猫を海岸に捨てに行った子供時代の不思議な挿話に始まり、父の従軍記録と負の記憶が語り起こされる。自身と父との間の軋轢(あつれき)と和解も明かす。

 全編を貫くのは父が抱え続けたトラウマを継承する覚悟だ。「目を背けたくなるようなことであれ、人はそれを自らの一部として引き受けなくてはならない。もしそうでなければ、歴史というものの意味がどこにあるだろう?」。代表作『ねじまき鳥クロニクル』などを読み解く視座を与えてくれる。(文芸春秋・1200円+税)

産経新聞
2020年5月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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