【産経の本】『立憲君主 昭和天皇 上』川瀬弘至著

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■『実録』など文献基にした決定版

 上皇陛下が譲位に関するお言葉を示されたとき、国民の圧倒的多数が支持した。これは「陛下がそうおっしゃるなら」という自然な敬愛の念にほかならず、この反応こそ日本の国柄であり、平和の源泉であると著者は言う。

 さらに、もし国家が消滅しかねないほどの危機や混乱が訪れたとき、国論を一つにまとめて乗り切れるものがあるとすれば、それは天皇の意思の表明であり、端的に示されたのが先の大戦における昭和天皇の「聖断」である、とも。

 幼少期に乃木希典や東郷平八郎らの薫陶をうけた昭和天皇。青年期の欧州歴訪を経て、国民とともに歩む立憲君主たらんと志し、壮年期は時代の波に翻弄された。立憲君主とはどうあるべきか、君主は政治とどう関わるべきか。こうした命題に本書は宮内庁が24年をかけて編纂(へんさん)した『昭和天皇実録』など560点の文献を基に応えた。まさに昭和天皇伝の決定版だ。

 新型コロナウイルス禍の危機に対し、昭和の危機をつづった本書を役立てたいと著者。皇室こそが2000年にわたり受け継がれてきた究極の「安全保障」と考えるからだ。本紙連載を大幅加筆、再構成した単行本を文庫化。下巻は来月発売される。(産経NF文庫・本体930円+税)

産経新聞
2020年5月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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