第8回河合隼雄賞が決定 学芸賞に小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』 物語賞は該当作なし

文学賞・賞

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 第8回河合隼雄物語賞・学芸賞の選考会が6月1日に行われ、学芸賞に小川さやかさんの『チョンキンマンションのボスは知っている―アングラ経済の人類学』(春秋社)が選ばれた。物語賞は該当作なしとなった。

 学芸賞に選ばれた『チョンキンマンションのボスは知っている』は、香港で生きるタンザニア人たちの生活を描いたノンフィクション。既存の制度に期待しない人々が見出した、合理的で可能性に満ちた有り様とは?

 経済学者の坂井豊貴さんは《彼らは「誰々は信用できる」といった、人間そのものへの評価をしない》と本作から得られた思想に触れながら、《カラマ達の姿は、日本でも進行する「個人の時代」を先取りしているように見える。それは国家に頼れず雇用が流動化した時代のビジネスパーソンの一つの生き方なのだ》(読売新聞・書評)と解説している。
https://www.bookbang.jp/review/article/586123

 著者の小川さんは、1978年愛知県生まれ。専門は文化人類学、アフリカ研究。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程指導認定退学。博士(地域研究)。日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館研究戦略センター機関研究員、同センター助教、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授を経て、現在、同研究科教授。著書に、『都市を生きぬくための狡知』、『「その日暮らし」の人類学』がある。

 今年で8回目を迎える同賞は、2013年に一般財団法人河合隼雄財団が創設。物語賞は、人のこころを支えるような物語をつくり出した優れた文芸作品に与えられ、河合隼雄が深く関わっていた児童文学もその対象とする。学芸賞は、優れた学術的成果と独創をもとに、様々な世界の深層を物語性豊かに明らかにした著作に与えられる。選考は1年ごとに行い、毎年3月からさかのぼって2年の期間内に発表・発行された作品を選考対象とする。選考結果の公式発表は「新潮」誌上および「webでも考える人」サイトで行い、候補作の公表はしていない。

Book Bang編集部
2020年6月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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