第18回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が決定 平山周吉『江藤淳は甦える』、河合香織『選べなかった命』が受賞

文学賞・賞

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 第18回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が23日に発表され、小林秀雄賞を平山周吉さんの『江藤淳は甦える』(新潮社)が、新潮ドキュメント賞を河合香織さんの『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文藝春秋)が受賞した。

 小林秀雄賞を受賞した『江藤淳は甦える』は、22歳の時、「夏目漱石論」でデビューして以来、『成熟と喪失』『海は甦える』など常に文壇の第一線で闘い続けた批評家・江藤淳の軌跡を、自死の当日に会った著者が徹底的な取材により解き明かした評伝。

 著者の平山さんは、1952年東京生まれ。慶應義塾大学文学部国文科卒。出版社で雑誌、書籍の編集に従事した。2019年4月現在、雑文家。著書に『昭和天皇「よもの海」の謎』『戦争画リターンズ 藤田嗣治とアッツ島の花々』がある。

 新潮ドキュメント賞を受賞した『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』は、出生前診断の誤診を巡って、北海道に住む夫婦が医師と医院を相手に損害賠償を求める訴訟を追ったノンフィクション作品。裁判の過程で見えてきたのは、そもそも現在の母体保護法では、障害を理由にした中絶は認められていないことだった。ダウン症の子と共に生きる家族、ダウン症でありながら大学に行った女性、家族に委ねられた選別に苦しむ助産師。多くの当事者の声に耳を傾けながら選ぶことの是非を考える内容となっている。昨年、第50回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。

 著者の河合さんは、1974年生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒業。2004年に出版した『セックスボランティア』で、障害者の性と愛の問題を取り上げ、話題を呼ぶ。2009年に『ウスケボーイズ─日本ワインの革命児たち─』で小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に『帰りたくない─少女沖縄連れ去り事件─』がある。

 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞はどちらも2002(平成14)年に創設。元は1988(昭和63)年に創設された人文科学と社会科学を対象とした新潮学芸賞から分離された賞。小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外の日本語による言語表現作品を対象とした学術賞で、自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品に与えられる。新潮ドキュメント賞は、雑誌掲載も含むノンフィクション作品を対象とした文学賞で、ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品に与えられる。

 昨年は、ブッダから道元までの思想的変遷を「超越と実存の関係」から読み解いた南直哉さんの『超越と実存―「無常」をめぐる仏教史―』(新潮社)が小林秀雄賞を受賞。度重なる制裁を受ける北朝鮮が、核兵器やミサイルの開発を進められた背景を驚愕の実例とともに解き明かした古川勝久さんの『北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―』(新潮社)が新潮ドキュメント賞を受賞している。

Book Bang編集部
2019年8月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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