【産経の本】『特攻の真意 大西瀧治郎はなぜ「特攻」を命じたのか』神立尚紀著

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■作戦に込めた密かなメッセージ

 「特攻隊の英霊に曰(もう)す 善く戦ひたり深謝す」と書き遺(のこ)し、昭和20年8月16日、海軍中将の大西瀧治郎は自刃した。最初に特攻隊を編成し「特攻の生みの親」と呼ばれた大西は、玉音放送の直前まで徹底抗戦を強硬に主張していた。

 なぜ大西は自ら「統率の外道」と称したというほど、非情な特攻作戦にこだわったのか。本書は、作戦に関わった多くの人々の証言から、大西が特攻に込めた密(ひそ)かなメッセージを明らかにしている。

 著者はノンフィクションを数多く手掛けてきたが、特攻をテーマにするのは意識的に避けてきた。とても1冊で語りつくせるとは思えなかったからだ。しかし、元零戦特攻隊員の角田(つのだ)和男氏と、副官として大西に仕えた門司親徳(もじ・ちかのり)氏の2人が語る大西の意外な実像を聞き、彼の真意をきちんと後世に残しておくべきだと考えて本書を執筆したという。

 戦後75年の今年、再文庫化(旧版は文春文庫)にあたり新たに、大西らが過ごしたフィリピンのクラーク特攻基地訪問記を追加。さらに大西の遺書の写真は、旧版の巻物状とは違い、表装前の便箋5枚のものに差し替えられ、自刃直前に書かれた状況が生々しく迫ってくる。(光人社NF文庫・1080円+税)

産経新聞
2020年7月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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