第19回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が決定 『心を病んだらいけないの?』『潜入ルポamazon帝国』

文学賞・賞

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 第19回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が1日に発表された。小林秀雄賞は斎藤環さんと與那覇潤さんの共著『心を病んだらいけないの?』(新潮社)が、新潮ドキュメント賞は横田増生さんの『潜入ルポamazon帝国』(小学館)が受賞した。

 小林秀雄賞を受賞した『心を病んだらいけないの?』は、「ひきこもり」を専門とする精神科医の斎藤環さんと、「重度のうつ」をくぐり抜けた歴史学者の与那覇潤さんが、心が楽になる人間関係とコミュニケーションのあり方を提案した一冊。

 著者の斎藤さんは、1961年岩手県生まれ。専門は思春期・青年期の精神病理学で、「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動する。與那覇さんは、1979年神奈川県生まれ。学者時代の専門は日本近代史。地方公立大学准教授として教鞭をとった後、双極性障害にともなう重度のうつにより退職。2018年に自身の病気と離職の体験を綴った『知性は死なない』が話題となる。

 新潮ドキュメント賞を受賞した『潜入ルポamazon帝国』は、世界最大の小売企業であるアマゾンの即日配送、カスタマーレビュー、マーケットプレイス、AWSなどの現場に忍び込み「巨大企業の光と影」を明らかにしていくノンフィクション。増田さんは15年前にもアマゾンの配送センターで働き、その実情に切り込んでいる。

 著者の横田さんは、1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、米・アイオワ大学大学院に留学。ジャーナリズム学部を卒業。1993年に帰国後、物流業界紙「輸送経済」の記者、編集長を務め、1999年にフリージャーナリストとなる。著書に『アメリカ「対日感情」紀行』『アマゾン・ドット・コムの光と影』『ユニクロ帝国の光と影』『ユニクロ潜入一年』などがある。

 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞はどちらも2002(平成14)年に創設。元は1988(昭和63)年に創設された人文科学と社会科学を対象とした新潮学芸賞から分離された賞。小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外の日本語による言語表現作品を対象とした学術賞で、自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品に与えられる。新潮ドキュメント賞は、雑誌掲載も含むノンフィクション作品を対象とした文学賞で、ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品に与えられる。

 昨年は、文壇の第一線で闘い続けた批評家・江藤淳の軌跡を描いた平山周吉さんの評伝『江藤淳は甦える』(新潮社)が小林秀雄賞を受賞。出生前診断の誤診を巡って、北海道に住む夫婦が医師と医院を相手に損害賠償を求める訴訟を追ったノンフィクション作品『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文藝春秋)が新潮ドキュメント賞を受賞している。

Book Bang編集部
2020年9月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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