新型コロナウイルスがあぶり出した日本の闇『同調圧力』 世間の重苦しい圧力から開放されるには[新書ベストセラー]

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 9月15日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、新書第1位は『ケーキの切れない非行少年たち』が獲得した。
 第2位は『コロナ後の世界』。第3位は『還暦からの底力 歴史・人・旅に学ぶ生き方』となった。

 4位以下で注目は4位にランクインした『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』。劇作家の鴻上尚史さんと法学者で世間学の研究者・佐藤直樹さんが新型コロナウイルスがあぶり出した日本社会の「闇」に迫った対談。

 同書では違反した場合に罰則が定められた外出禁止令や、補償する代わりに休業を要請した各国の例と違い、日本では政府が強制力のない「お願い」をするだけで、国民の間に過度に忖度し自主規制するシステムが働いたと述べる。二人は感染者をバッシングし、相互監視を生んだ日本の「世間」のあり方に注目し、多数派や主流派の「空気」に従えという、重苦しい圧力から開放されるためのヒントを探っている。

 一方で新首相となった菅義偉氏は自民党総裁選出馬時に《まず自分でできることは自分でやる、自分でできなくなったらまずは家族とかあるいは地域で支えてもらう、そしてそれでもダメであればそれは必ず国が責任を持って守ってくれる。そうした信頼のある国づくりというものを行っていきたいと思います》(NHKニュースウォッチ9より)と語った。ここで目指す国の形として述べられた「自助・共助・公助」の精神と、コロナに対する日本の対応――まずは「自粛」、次に「世間」による自発的な「相互監視」、そして行政が渋々出した「緊急事態宣言」――はまさに表裏一体だ。菅首相の言葉に、ますます生きづらく息苦しい世の中を目指すのか、と絶望的な感想を持った方にお勧めの一冊だ。

1位『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治[著](新潮社)

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。(新潮社ウェブサイトより)

2位『コロナ後の世界』ジャレド・ダイアモンド、ポール・クルーグマン、リンダ・グラットン 他[著](文藝春秋)

新型コロナウイルスが国境を越えて感染を拡大させる中、現代最高峰の知性6人に緊急インタビューを行い、世界と日本の行く末について問うた。 このパンデミックは人類の歴史にどんな影響を及ぼすのか? これから我々はどんな未来に立ち向かうのか? 世界史的・文明論的な観点から、冷静かつ大胆に2020年代を予測する。(文藝春秋ウェブサイトより)

3位『還暦からの底力 歴史・人・旅に学ぶ生き方』出口治明[著](講談社)

「還暦からの」と銘打ってますが、還暦未満のあなたにもきっと役立つ。人生100年時代をパワフルに行動するための出口流初の人生指南!! 人生の楽しみは喜怒哀楽で決まります! こんな時代だからこそ、元気にいきましょう! 本書には出口さんのように元気に生きるヒントが満載です。(講談社ウェブサイトより)

4位『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』鴻上尚史[著]佐藤直樹[著](講談社)

5位『死の教科書 心が晴れる48のヒント』五木寛之[著](宝島社)

6位『なんのために学ぶのか』池上彰[著](SBクリエイティブ)

7位『たちどまって考える』ヤマザキマリ[著](中央公論新社)

8位『「反日」異常事態』シンシアリー[著](扶桑社)

9位『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』瀧本哲史[著](星海社発行/講談社発売)

10位『公安調査庁 情報コミュニティーの新たな地殻変動』手嶋龍一[著]佐藤優[著](中央公論新社)

〈新書ランキング 9月15日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2020年9月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

集英社

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