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- ホテル・アルカディア
- 価格:2,200円(税込)
第30回Bunkamuraドゥマゴ文学賞が3日に発表され、石川宗生さんの『ホテル・アルカディア』(集英社)に決まった。
受賞作『ホテル・アルカディア』は、敷地のはずれにあるコテージに閉じこもってしまった絶世の美女プルデンシアを外に誘い出すために、投宿していた7名の芸術家の挑戦を描いた物語。
著者の石川宗生さんは、デビュー後、ぶっ飛んだシチュエーションと巧みな文体で、全国の書店員から注目された作家。1984年千葉県生まれ。オハイオ・ウェスリアン大学天体物理学部卒業。約3年間の世界放浪、メキシコ・グアテマラでのスペイン語留学など経て、翻訳者として活動する。2016年に短編「吉田同名」で第7回創元SF短編賞を受賞しデビュー。2018年に受賞作を含む短編集『半分世界』を刊行している。
今年選考委員を務めた哲学者の野矢茂樹さんは、「読み始めてすぐに『あ、他の小説とぜんぜん違う』と感じた。(中略)。そして三分の二ほど読んだところで『まいりました』と屈服したのである」と感想を述べ、「石川さんの妄想には論理展開がある」と評した。「最初のアイデアの種がどんどん膨らみ、これがこうなったら次はこうなる。そしたらこうなって、ここまでいくだろうと、妄想が勝手に突っ走っていく。この妄想のグルーブ感がなんとも楽しい。屈服した私は、小説ってこういうものだったよな、と、物語を語り出すことの根源に触れたような気にさえなったのである」と作品を評価した。
今年で30回目を迎える同賞は、株式会社東急文化村が主催する文学賞。パリの「ドゥ・マゴ賞」(1933年創設)のもつ先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘することを目的に1990年に創設された。小説・評論・戯曲・詩を毎年「ひとりの選考委員」が審査し、年1回発表している。
昨年は、戦前・戦中・戦後に渡る日本における出版および文学の流れを横断する作品『古本屋散策』が受賞。過去には町田康さんの『くっすん大黒』(第7回)、吉本ばななさんの『不倫と南米』(第10回)、エッセイでは平松洋子さんの『買えない味』(第16回)、評論では武田砂鉄さんの『紋切型社会』(第25回)などが受賞している。
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