「こだわりを捨てたら楽になりました」直木賞作家・馳星周 犬と出会い変わった心境を語る

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 10月13日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『半沢直樹 アルルカンと道化師』が獲得した。
 第2位は『転生したらスライムだった件(17)』。第3位は『少年と犬』となった。

 3位の『少年と犬』は第163回直木賞を受賞した馳星周さんの作品。馳さん出演の番組「北海道道」(NHK札幌放送局制作)が10月15日にNHK総合で全国放送され大きな話題となった。馳さんは北海道浦河町出身。現在は地元でも生活をしているという。番組ではノワール小説の旗手であった馳さんが犬を題材にした小説を書き始めた理由に迫った。インタビュアーは鈴井貴之さん。鈴木さんも6匹の犬を飼う愛犬家として知られ、トークは大いに盛り上がった。

 馳さんは知人の紹介で出会ったバーニーズ・マウンテン・ドッグに一目惚れし、夜遊び続きだった生活スタイルが劇的に変わったという。そして11年間生活をともにした愛犬の最後の日々をテーマにしたノンフィクション『走ろうぜ、マージ』(KADOKAWA)を出版したころから、ノワールにこだわらずに幅広いテーマを書くようになった。馳さんは「肩肘張ってノワール、ノワールと言わなくていいんじゃないか。書きたいものを書きたいように書けばいいんじゃないのかと思えるようになった」「こだわりを捨てたら楽になりましたね」と当時の心境の変化を明かした。

『少年と犬』は一匹の同じ犬が登場する連作集。いずれも心に重荷を背負った人々の前に犬があらわれ、人々は犬と出会うことで一筋の救いの光をみつける。物語は悲しい結末を迎えることもあるが、馳さんは「犬によって救われて死んでいくのは祝福されていいんじゃないか」「死ぬことがすべて僕は悪いとは思ってない」「救われて穏やかな心で天に帰れるなら、皆が言うほど悪いことじゃないのではないかという思いが僕にはある」と今作に込めた思いを語った。

1位『半沢直樹 アルルカンと道化師』池井戸潤[著](講談社)

東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとにとある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは――。(講談社ウェブサイトより)

2位『転生したらスライムだった件(17)』伏瀬[著]みっつばー[イラスト](マイクロマガジン社)

本編では見られないあのキャラたちの活躍が詰まった『転スラ』初の短編集! 魔国連邦の幹部では珍しくも人間であるミョルマイルが西方諸国で暗躍する ――『ミョルマイルの野望』 愛する人の残滓を求め世界を旅するヴェルグリンドが関わった、とある国の物語 ――『遠い記憶』 帝国再建に向けて動き出すカリギュリオは、己の過去とも向き合い始める ――『激動の日々』 魔王ギィ・クリムゾンのメイドにして原初の青レイン。そんな彼女も周りが異常ならボヤキたくもなるよね ――『青い悪魔のひとり言』 他、特別収録の1本を加えた『転スラ』本編とは違った視点で描かれる珠玉のSS集! (マイクロマガジン社ウェブサイトより)

3位『少年と犬』馳星周[著](文藝春秋)

傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。 2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか…… 犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!(文藝春秋ウェブサイトより)

4位『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう[著](中央公論新社)

5位『気がつけば、終着駅』佐藤愛子[著](中央公論新社)

6位『破局』遠野遥[著](河出書房新社)

7位『あの夏が飽和する。』カンザキイオリ[著](河出書房新社)

8位『この気持ちもいつか忘れる CD付・先行限定版』住野よる[著](新潮社)

9位『始まりの木』夏川草介[著](小学館)

10位『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ[著]斎藤真理子[訳](筑摩書房)

〈文芸書ランキング 10月13日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2020年10月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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