『ひらめきはスキルである』
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どんな状況でも適切な価値を生み出せる! 「ひらめきのスキル」の思考術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
著者によれば『ひらめきはスキルである』(瀬田崇仁 著、総合法令出版)は、「いつ、どこで、どんな瞬間でも、ひらめくスキル」について書かれたものなのだそうです。
ここでいう「ひらめき」とは、見事なアイデアや考えを、魔法のように思いつくこと。そこから生まれるものには、次のような特徴があるといいます。
① 結果が出る
② 現実離れしていない
③ 自由な発想で作り出されている
④ ゴールや道筋が見えている
⑤ 確信がある
(「はじめに」より)
著者は、「頭の使い方コンサルタント」として、さまざまな業種の方にビジネススキルを教えている人物。
大企業を筆頭に多くのクライアントを持ち、依頼されるプロジェクトの多くは未経験分野であるにもかかわらず、成果を出すことができているそうです。
そんなことが可能なのかと不思議にも思えますが、ひらめきのスキルを身につければ、業種や業界、プロジェクトを問わず、適切な価値を生み出すことができるというのです。
これからの時代では、「替えの利かない特別な存在」にならなければ、市場価値を持てません。
他人に価値を決められる生き方ではなく、自分オリジナルの価値を生み出せる存在になること。それこそがこれからの時代における、生きる道です。(「はじめに」より)
だからこそ、「ひらめきのレッスン」に取り組んでみるべきだというのです。
第3章「『ひらめきの素材』を増やす思考法」のなかから、ひとつのポイントをピックアップしてみることにしましょう。
「答え」を得るより、「問い」を増やす
コンサルタントとしての立場から、多くの方々が抱えるビジネスの課題を向き合うと、「うまくいく人たち」と「うまくいかない人たち、それぞれの共通点が見えてくるのだそうです。
講座やコンサルティングに参加する際の、基本姿勢が違うというのです。
まず「うまくいかない人たち」について著者は、なにを知る必要があるのかを明確にしていないと指摘しています。
・「ここに行けば、何かを知ることができる」
・「答えを知れば、自分の問題が解決する」
・「自分が知らない秘密を、講師が知っているに違いない」
(92〜93ページより)
このように、ただ答えが欲しくて参加しているにすぎないということ。
そのため答えを得るだけで満足してしまい、“そこから先”の疑問や質問を生むことができないわけです。そのため学びや成長がそこで止まってしまい、そればかりか行動する前に満足してしまうことも。
一方、明確な「問い」を持って参加するのが「うまくいく人たち」。たとえば、「うまく話せるようになりたい」としたら、
・「話が長いと言われるけれど、どうやったら短くできるか?」
・「説明がうまい人と、下手な人の違いはどこにあるんだろう?」
・「たとえ話の作り方には、どんなポイントがあるのか?」
(93ページより)
というように、情報(=答え)を知る前段階として「問い」を持ち、その答えをつかむために講座やコンサルティングに参加するということ。
得たいものが明確になっている状態であり、さらには具体的な質問も用意したうえで臨むわけです。(92ページより)
「問い」の連鎖を起こす
ところでコンサルタントや講師たちの間では、「うまくいく人は、なにを聞いても自分の学びにする」といわれているそうです。
つまり、うまくいく人は、すべての情報を「問い」に結びつけながらインプットし、結果につながるように翻訳したり、変換する能力が高いということ。
「問い」に対する答えをつかむことによって「知りたいこと」や「疑問」を増やし、そこから「問い」の連鎖を起こせるわけです。
・「わかりやすい説明は、何が違うのだろう?」(問い)
↓
・「『結論・根拠・たとえば』の順番で話すと、わかりやすい説明になる」(答え)
↓
・「じゃあ、『たとえば』を上手に作るためのポイントって何だろう?」(問いの連鎖)
↓
・「聞いた人が、“あるある”と感じる例を選ぶことを意識する」(答え)
↓
・「“あるある”の引き出しを増やすために、日常的に何ができるかな?」(問いの連鎖)
(94〜95ページより)
このようなプロセスを経て思考していくことで、自分が知りたい分野の知識や情報を、体系的に深掘りできるようになるわけです。
さらに、それ以上に大切な要素として著者が強調しているのが「自分でたどり着いた答え」。すなわち、「問い」を経て行き着いた、自分なりのアウトプット(結論)です。
というと難しそうにも聞こえますが、それ自体がオリジナルなものでなければいけないわけではないそうです。
なぜなら、「自分になにが必要か」を考えた結果として得られた答えなのであれば、たとえその知識が一般的なものであったとしても、それが「自分の力でたどり着いた答え」であることには違いないから。
また、そうした思考を鍛えることで、答えそのものがオリジナルになるケースもあるといいます。
そして、その「自分の力でたどり着いた答え」こそが、「ひらめきの素材」になっていくということ。
決して複雑なことではなく、「どんな問いを持てばいいのか?」「なにに対して問いを持てばいいのか」の2つから、勝手に問いが連鎖していくというのです。(94ページより)
*
たとえばこのように、本書で紹介されている「ひらめきのスキル」は、現在のライフスタイルを変えることなく、発想を転換するだけで活用できるものばかり。
なにかを用意したり、我慢したりする必要はなく、「日常を楽しく過ごしながら成長できるメソッド」だということ。
もちろん、年齢や経験も関係なし。そんなわけで、手にとってみるだけの価値はありそうです。
Source: 総合法令出版
Photo: 印南敦史