【聞きたい。】高橋幸子さん 『サッコ先生と! からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』

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【聞きたい。】高橋幸子さん 『サッコ先生と! からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』

[文] 産経新聞社

 ■科学的、前向きな「教科書」

高橋幸子さん

 子供たちの性被害を防ぎたい。強い使命感をもち、若年層への性教育を続けている産婦人科医、高橋幸子さん。学校でも親子関係でも避けられがちな「性」の話を、科学的な視点から前向きな語り口で一冊の本にまとめた。「正しい知識は生活を豊かにし、困ったときに守ってくれる」。著者の思いがまっすぐ届く、新しい“教科書”だ。

 高橋さんは冒頭で、「水着で隠れる場所」と「唇」を「プライベートゾーン」だと示した。〈「ほかのだれかのものではなく、あなただけの」とっても大切な場所〉〈あなた以外の人に勝手にさわらせてはいけません〉。本書ではこのことが繰り返し強調される。

 日ごろ、性虐待の被害や若年妊娠で診察に訪れる子供たちと接している高橋さん。かつて成人した兄から性虐待を受けた小学2年と4年の姉妹を診察した。事態は妹が母親に報告したことで発覚したが、妹は「プライベートゾーン」の言葉を学んだ経験があり、姉にはなかった。

 「日本では残念ながら小児性愛者による性被害が女子にも男子にもある。『プライベートゾーン』を学ぶことは子供たちが被害者にも加害者にもならないためにも必要」だと明言する。

 日本の学校教育では、学習指導要領に基づき、小学校でも中学校でも「性交」は扱われない。十分な性教育を受けないまま、インターネットなどに氾濫するゆがんだ情報に子供たちはさらされている。そんな状況に保護者側が危機感を強め、学校に頼らず自主的に性教育に取り組む動きが近年、出始めている。

 高橋さんは保護者らの意識の高まりを歓迎しつつ「保護者自身もしっかりとした性教育を受けていない世代。子供の疑問に答えるために、まずは本書を保護者が読んだ上で子供に渡してもらえたら」。性の知識を伝えるコツは科学的に淡々と。「恥ずかしいとか、気持ち悪いとか感じずに、受け止めてくれますよ」(リトルモア・1300円+税)

 篠原那美

   ◇

【プロフィル】高橋幸子

 たかはし・さちこ 昭和50年、埼玉県出身。産婦人科医。埼玉医科大学病院、地域医学推進センター助教。日本家族計画協会クリニック非常勤医師。

産経新聞
2020年11月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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