仕事ができる人は、なぜ達成感を大事にするのか?

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AI分析でわかった トップ5%社員の習慣

『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』

著者
越川慎司 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799326084
発売日
2020/09/25
価格
1,650円(税込)

仕事ができる人は、なぜ達成感を大事にするのか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(越川慎司 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者が代表を務めるクロスリバーでは、これまで605社に対して働き方改革の支援を行なってきたといいます。

注目すべきは、その過程において「各社の人事評価『上位5%』の社員は、どのような行動・働き方をしているか」について調査をしてきたという事実。

顕著な成果を出した「5%社員」たちは優れた働き方を実践しており、そこに再現性の高いルールが存在し、一般化できる要素があるはずだと考えたからなのだそうです。

「環境など条件が違うから、一般化なんてできるわけがない」と言われることもあったようです。

しかし「5%社員」の調査をもとに導き出した成功ルールについて、その後29社で実証実験を行った結果、「5%社員」以外でも効果を出したというのです。

この再現実験でわかったのは、成功は失敗との二者択一なのではなく、失敗の先に成功があるということです。

失敗を積み重ねて学び、行動を変えていくことで成功に到達することができるのです。

つまり、選択にいつまでも悩んでいるのではなく、リスクを抑えながら行動の数を増やしていったほうが成功にたどり着きやすいのです。

変化の激しい中で生き残るには、何もしないで止まっていることがリスクになるのです。(「はじめに」より)

そこで著者は、「5%社員」のシンプルな行動と考え方と自分とを照らし合わせてほしいと読者に訴えかけています。「同じだ」と安心できることもあれば、違っているからこそ学びになることもあるはずだから。

きょうは第3章「トップ『5%社員』のシンプルな思考と行動」のなかから、「5%社員」の「達成感」についての考え方とアプローチを抜き出してみましょう。

金曜の夜に幸せを感じる「5%社員」

トップ5%社員は 達成感を大切にする

○ 自分の目指すべき姿に向かって仕事をする

× 他者から認められることを目指して仕事をする

(84ページより)

クライアント企業の社員総計16万人に対して実施したアンケートで「幸せを感じるのはいつですか?」と聞いたところ、一般社員の57%は「土曜日の朝」と答えていたそうです。

彼らは「目の前の作業に追われ、あっという間に日々が過ぎていく」と感じており、徒労感にさいなまれていたのだとか。

「5%社員」にくらべると労働時間が長いのに、上司からの評価につながらないことも多く、稼働日は疲労感を抱えているわけです。

どんな状態で土日の休日に入るのですから、十分に睡眠をとれれば幸せを感じるのでしょう。

一方、トップ「5%社員」が最も幸せを感じていたのは「金曜日の夜」。ストレスいっぱいの仕事から解放され、休日が訪れる前の日はワクワクするものです。

とはいえ追加ヒアリングによって、「5%社員」が感じていたのは解放感ではなく達成感であることが判明したというのです。

彼らの62%が達成感をもったときに働きがいを感じています。

仕事から解放される喜びではなく、達成と成長を目指し、それを感じられた時に幸せを感じているのです。(86ページより)

思うように成果を出せずに徒労感と疲労感を持つ一般社員は、そこから抜け出せた「土曜の朝」に幸せを感じ、「5%社員」はしっかりと目標を立ててそれを達成した「金曜の夜」に幸せを感じるということがわかったわけです。(84ページより)

目標があるから達成がある

「5%社員」に追加ヒアリングをして見えてきたのは、個々人が持つビジョンが明確であること。

「同じミスを二度としない」「きのうの自分よりも成長したきょうの自分でいたい」というようなコメントが多く出てきたというのです。

つまり彼らは、改善と成長を目指しており、それに向けて仕事をしているという感覚を持っているのです。

仕事をすること自体が目的ではなく、その仕事によって生まれた成果を重視しています。

ですから作業が終わった瞬間ではなく、その作業が成果になったときに目標に到達し、達成感を得るというメカニズムです。(86ページより)

この考え方を組織全体に浸透させたいのであれば、「自己実現」というような堅苦しいことばを使うのではなく、シンプルに「目的思考」を徹底させるのが効果的だそうです。

「その作業をなんのためにやっているのか」「なにをもって成功とするのか」、この2つの質問を問いかけ続けることが重要だということ。

クライアント企業8社での行動実験では、目的を明確にして作業したグループAと、目的を不明瞭にしたまま作業をスタートしたBでは、明らかに差が出たといいます。

目的を明確にしたグループAのほうが作業時間は12%短く、アウトプットの質も高かったというのです。(86ページより)

「5%社員」が目指すのは自己実現

「自己実現欲求」とは、あくまでも主体が自分自身であり、「自分のなりたい姿に向けて成長したい」「なりたい姿に到達したい」という欲求。そして「5%社員」は、その多くが自己実現欲求を目指しているのだそうです。

つまり主体は自分であり、自分でできることと自分でできないことをしっかりと区分けして、自分でコントロールできる範囲の中でどのように自分が目指す姿に近づいていくかということを考えています。(89ページより)

すなわち、自分でコントロールしにくい「相手からの承認」に依存せず、自分が成長することを目指しているわけです。

相手にどう評価されるかではなく、自分の目指すべき姿にどれくらい近づいたかが重要であるということ。

「自分がその仕事をやりたい」「自分はその仕事をやることに価値がある」というポジティブな感情が心に宿ると、市場や環境の変化を「恐怖」ではなく「挑戦」ととらえるようになるといいます。

この変化への対応力を高めることが、企業にも個人にも求められるべき要素であるといえます。

大切なのは、一時的な金銭報酬に固執するのではなく、自分が目指す姿に近づけるように目的を意識した行動をすること。そうすれば目標を達成しやすく、働きがいも得やすいわけです。(87ページより)

本書のなかから自分にないものを見つけ、自ら行動実験をしてみることを著者は勧めています。自分の行動を変えたら、振り返ってみることも忘れずに。

うまくいったなら続ければいいですし、ダメなら止めればいいわけです。そうした内省によって得た学びを次の行動に活かしていけば、必ず成功に近づきそうです。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2020年12月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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