【話題の本】『日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る』播田安弘著

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 □歴史の「通説」科学的に検証

 元寇の文永の役で、日本を襲った蒙古軍が一夜にして撤退したのは暴風雨が理由か。本能寺の変後、中国地方にいた羽柴秀吉がわずかな日数で京都に引き返せたのはなぜか。先の大戦で戦艦大和はなぜ、ほとんど出撃せずに沈没したのか-。

 疑問を感じずにはいられない日本史の「通説」を物理、地理、気象などのデータを駆使して検証しようという本。造船会社で船の設計者だった著者が、歴史学者とは異なる観点から謎を解き明かしていく。

 蒙古襲来では、軍船が対馬海峡を横断した際の波の周期などから船酔いの影響をはじき出し、蒙古軍の3分の1ほどは満足に戦えなかった可能性を示唆する。秀吉の「中国大返し」では、よろいを装着して行軍する兵士1日の消費エネルギーを算出し、全軍で毎日約40万個のおにぎりが必要だったと指摘。超難関な軍事行動だったとした上で、それを可能にした理由を科学的に推測した。

 昨年9月下旬の刊行から3カ月で6刷4万部と快調だ。好評の背景に「日本史と科学、組み合わせの珍しさがあるのでは」と編集担当者。版元には「小学生のとき以来のモヤモヤがすっきりした」という声も寄せられている。(ブルーバックス・1000円+税)

 篠原那美

産経新聞
2021年1月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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