『世界の「常識」図鑑 = The Pictorial Encyclopedia of Global Common Sense : どこへ行っても恥をかかない』
- 著者
- 御手洗, 昭治, 1949- /小笠原, はるの
- 出版社
- 総合法令出版
- ISBN
- 9784862807854
- 価格
- 1,430円(税込)
書籍情報:openBD
恥をかかない世界のビジネスマナー|日本の「常識」は世界の「非常識」かも?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
外国人とのカルチャーギャップは、とりわけグローバルビジネスにおいては大きな課題。
そもそも価値観の違いは、日本人同士であってもトラブルにつながりがちなのですから、「常識」を共有していない外国人との商談やプロジェクトであればなおさらです。
だからこそ、異国の「常識」を知っておくことが重要であり、それはビジネスパーソンに必須のスキル。
『どこへ行っても恥をかかない 世界の「常識」図鑑』(御手洗昭治 編著、小笠原はるの 著、総合法令出版)の著者は、そう主張しています。
マナーやタブー、ライフスタイルといった「常識」を知っておくことは、外国の人との交流において語学よりも大切です。
無意識のうちに「非常識」なふるまいをしてしまえば、顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまいます。
それに、なにが喜ばれ、なにが嫌がられるかを知らないままでは、積極的に声をかけ、仲良くなるのは難しいでしょう。(「はじめに」より)
とはいえ、外国の「常識」を知ることはなかなか困難。多くの場合、それはその国の人々が共有しているため明文化されないことが多く、暗黙の了解となってしまいがちだからです。
そこで本書では、異文化コミュニケーションに役立つ世界の142種もの「常識」をピックアップして紹介しているわけです。
ちなみに編著者は札幌大学名誉教授。北海道日米協会副会長・専務理事兼任、日本交渉学会元会長。著者はコミュニケーション学・臨床教育学・翻訳学を専門とする札幌大学教授です。
そうしたバックグラウンドに基づいて書かれた本書のなかから、きょうは第6章「世界のビジネス」に注目し、ビジネスについての世界の「常識」を7つご紹介したいと思います。
イギリスではネクタイが経歴詐称になる?
イギリスでは、組織ごとにレジメンタルタイ(斜めのストライプ柄のネクタイ)の柄が指定されているもの。
たとえば、紺・赤・黄の斜めストライプは、英国海兵隊、黒字に黄色の斜めストライプはオックスフォード大学のネクタイとなるわけです。
つまり、その点をわきまえておかないと、場合によっては学歴を誤解されてしまうことにもなりかねないということ。
そのため、イギリスでレジメンタルタイを締める際には注意が必要だというわけです。事前に調べておきたいところですね。(154ページより)
自己紹介のあとに名刺を渡すのが国際マナー
日本では、名刺交換のあとに自己紹介をするのが一般的。ところが国際的には、握手と自己紹介のあとで名刺交換をするもの。
また中国やシンガポールなどでは、両手で名刺を渡すのがマナー。しかし欧米では名刺を片手で渡すのが一般的なので、両手で渡すと儀式ばった印象を与えてしまうのだとか。
またヒンドゥー圏とイスラム圏では、名刺も右手で渡すようにする必要があるようです。(159ページより)
スペイン人はわざと会議を長引かせる
スペインでは「シエスタ」という長い昼休みをとるため、午後も体力が残っているもの。そんなこともあってか、スペイン人は長い会議をする傾向があるのだそうです。
また、スペイン人は気心の知れた相手とのビジネスを好むため、新しいプロジェクトでは相手をよく知るためにわざと会議を長引かせることもあるようだと著者は指摘しています。(163ページより)
スウェーデンの会議で割り込み発言は厳禁
スウェーデンなどの北欧では、「人の話は遮るべきではない」という考え方が一般的。とくに会議での割り込みは厳禁で、人が話し終わってから挙手をして話す決まりになっているそうです。(164ページより)
インドネシア人の「明日」は翌日ではない
インドネシアやフィリピンなどの東南アジアでは、時間はゴムのように伸びたり縮んだりするものとみなされているのだといいます。そのため、正確に時間を守ることはあまりないというのです。
たとえば、「明日もお会いしましょう」と約束したインドネシア人が、翌日になってもいっこうに現れないというようなことは珍しくないそう。
それはインドネシア人の多くが、「明日」=「翌日から死ぬまでの時間」と捉えているためなのだといいます。(167ページより)
ラテン・アメリカでは遅刻が当たり前
そしてラテン・アメリカでも、たいていの人たちは時間に対しておおらかに生活を営んでいるもの。遅刻も日常茶飯事で、とくに言い訳もしないのが普通。
したがって、彼らをイベントに招いた場合も、招待状に書いてある時刻よりもかなり遅れて到着したりするわけです。
そこで、遅れてほしくない場合には、招待状に各集合時刻を30分ほど早くしたり、「時間厳守」を明記したりしましょうと著者は提案しています。(168ページより)
中国人のメンツを傷つけてはいけない
中国では対人関係が重視されるため、夕食の席を設けるなどして交渉相手を知ろうとする傾向にあるもの。
メンツを重視する文化であるため、コミュニケーションをとる際には相手に恥をかかせないようにすることが大切。
なお中国では挨拶の際、高い立場の人からではなく年長者から紹介するのが一般的。メンツを傷つけないためにも、挨拶の順番には気をつけるべきだそうです。(165ページより)
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異文化を学ぶことは、外国人とのコミュニケーションを円滑にするだけでなく、人生をも豊かにしてくれると著者はいいます。外国の文化を自国のそれと比較することで、視野が大きく広がっていくわけです。
したがって、「コミュニケーション」「ジェスチャー」「ライフスタイル」「マナー」「ルール・儀式」など、カテゴリーも多種多様な本書はきっと役立ってくれるはず。
外国の人々とのより円滑なコミュニケーションを実現するために、参考にする価値は大いにありそうです。
Source: 総合法令出版
Photo: 印南敦史