『鬼滅の刃』主題歌のLiSAさんも実践! 就寝時の口テープ効果を医師が解説

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 社会的ブームを巻き起こしている『鬼滅の刃』。同アニメ・映画の主題歌を歌い、2020年にはレコード大賞も受賞した歌手のLiSAさん。多くの人を引きつける歌声の秘密は、寝るときの「ある工夫」にあるようです。LiSAさんのTwitterによると以前から就寝時に口の中の乾燥を防ぐために、口テープを貼っているとのこと。口テープとは、睡眠時の鼻呼吸を促すマウステープ。いびきやのどの乾き防止に効果があるとされていますが、実は、身体のさまざまな不調の原因とされる「慢性上咽頭炎」の予防策としても有効です。医学博士である堀田修医師(堀田修クリニック)の著書『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい』より、慢性上咽頭炎を防ぐ口テープの方法について解説します。

鼻呼吸は上咽頭など体にやさしい呼吸法


鼻呼吸と口呼吸

 上咽頭とは、左右の鼻の穴から吸い込んだ空気が合流して、下の気管に向かって流れが変わる、中咽頭へ通じる空気の通り道です。この上咽頭が、慢性的に炎症を起こしている状態「慢性上咽頭炎」がさまざまな不調の原因となっていると考えられています。

 具体的には、頭痛、めまい、耳鳴り、鼻づまり、のどの痛みや違和感、慢性的なせきをはじめ、全身の倦怠感や関節痛、腎臓病の一つであるIgA腎症まで、多種多様です。そして、この上咽頭の炎症を引き起こすものの一つが、口呼吸です。

 口呼吸は人間が言葉を使うために人間のみが獲得した呼吸手段です。通り道が鼻毛や繊毛上皮(せんもうじょうひ)に覆われ、空気を浄化することができる鼻呼吸と異なり、口呼吸には空気を浄化する機能がありません。

 空気抵抗が低いのでその分、口呼吸は楽な呼吸です。末期がんなどで体力が衰えた人が口呼吸になるのはその方が楽だからです。しかし、口呼吸で吸い込んだ空気は、鼻呼吸で吸い込んだ空気とは異なり浄化されていないため、ほこりやウイルス・細菌などの微生物が直接、のどに入ってしまいます。その一部は上咽頭にも流れ込みます。

 人間以外の哺乳類では口腔の奥に位置する口蓋扁桃(こうがいへんとう)は食物の免疫学的バリアとしてのみ働きます。一方、言葉を話す人間の口蓋扁桃は食物のみならず、口呼吸をした際の空気の免疫学的バリアとしても機能します。それゆえ、体重当たりの口蓋扁桃の大きさは人間が哺乳類の中で最大です。鼻呼吸は口呼吸に比べて上咽頭にも扁桃にも優しい呼吸法です。

就寝時の口呼吸防止には口テープ


就寝時の口テープ

 しかし、日中起きている時は意識して鼻で呼吸をしているつもりでも、睡眠中に口呼吸になっている人は少なくありません。上咽頭は口呼吸に弱い部位なので、慢性上咽頭炎を改善させるには睡眠中も鼻呼吸をする必要があります。

 近年、口呼吸の弊害が注目されるようになってさまざまな口テープが販売されています。どれでもよいと思いますが値段は一枚50円程度です。コストの面では紙ばんそうこうを切って、寝るときに口に縦に貼るのが安上がりです。

 これは私の経験ですが、風邪にかかったかなと感じたら、ひどくなる前に、上咽頭炎のうっ血状態を改善するために首の後ろを湯たんぽで温めながら、口テープで鼻呼吸をして早めに床につけば、インフルエンザのような強烈なウイルスの場合を除くと、たいていは翌朝には風邪症状が軽減して爽やかな一日の始まりを迎えることができます。

 内科医は風邪の患者さんに接する機会が多い職業なので、以前は冬になると毎年のように風邪をひき、職業柄休むことができずにつらい思いをしたことが何度もありました。10年前から「首湯たんぽ」と「口テープ」を愛用するようになって以来、軽い風邪には何度もかかりましたが、仕事が辛くて寝込みそうな程のひどい状態にまで陥ったことは、幸いなことに一度もありません。

話すことを仕事にしている人は必須


堀田医師

 堀田医師の解説にあるように、口の中の乾燥だけでなく慢性上咽頭炎の予防にも効果がある口テープ。実はLiSAさんだけでなく、歌手の坂本冬美さんや、タレントの藤原紀香さん、生島ヒロシさんなど、多くの著名人が愛用しています。話すことや歌うことを職業にしている人は口呼吸になりやすいので、必須なのかもしれませんね。

堀田修(ほった・おさむ)
1957年、愛知県生まれ。1983年、防衛医科大学校卒業。医学博士。日本病巣疾患研究会理事長。日本腎臓学会評議員。IgA腎症根治治療ネットワーク代表。2001年にIgA腎症の根治治療である扁摘パルス療法を米国医学雑誌『Am J Kidney Disease』に発表。日本のIgA腎症診療が激変するきっかけとなった。2011年9月に「木を見て森も見る医療」の拠点として仙台市内に医療法人モクシン堀田修クリニック-HOC-を開設。現在、堀田修クリニック(宮城)、成田記念病院(愛知)でIgA腎症専門外来を行う。著書に『病気が治る鼻うがい健康法』(KADOKAWA)、『道なき道の先を診る』(医薬経済社)など。

堀田修(堀田修クリニック医師)

あさ出版
2021年1月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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