寄生に監禁、共食い 残酷すぎる生きものたちの生態4選

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 自然界では、日々1000万種以上もの生きものたちが生存競争をくり広げています。ときに食らいあい、ときに騙し合い、ときに助け合うなど、複雑に絡み合った生態系の中で繰り広げられる生きものたちの生存戦略は、人間社会で生きる人々の目に不可解で謎に満ちた残酷な光景と映ることがあるかもしれません。
本記事では、『ざんこく探偵の生きもの事件簿』より、残酷にフォーカスすることで見えてくる、身近な生きものたちの生存戦略の不思議を紹介します。

巣から次々と落とされる卵。意外な犯人とは


ヒナはまだ目も開かないうちに卵を落とす。落としやすいように背中にはくぼみがある

 夏の川辺のアシ原では、オオヨシキリという野鳥が巣を作り、子育てをしていることがあります。カッコウは、そのようなオオヨシキリなどの他の鳥の巣に卵を産み、代わりに育ててもらう行動をします。これを托卵といいます。
カッコウの卵は10日ほどで孵化しますが、これはオオヨシキリの孵化と比べて早いのです。早く孵化したカッコウのヒナは、自分以外の卵を次々と巣の外へ押し出して落としてしまいます。しかし、オオヨシキリの親鳥は、自分の卵を落としたカッコウのヒナを自分のヒナだと思い込み、採ってきたエサを与え、巣立ちまで熱心に世話を続けるのです。

オスは殺される? 命懸けなカマキリの繁殖行動


交尾中にオスが食べられても交尾は終わらず、神経だけが動き続けることがある

 カマキリは動くものをエサだと思う習性があると言われています。そのため、メスはオスと交尾するときに自分の背中に乗って動くオスをエサだと勘違いし、頭から食べてしまうのです! ちなみに、オスがメスの背中に乗っているのは、平均で4時間ほどだと言われています。長時間ではありますが、毎回オスが食べられるわけではなく、一説ではオスがメスに食べられるのは5回に1回の頻度とのことです。
カマキリはオスもメスも冬を越すことができません。メスに食べられて死んでしまったオスも、産卵するメスの糧となると考えられます。

監禁される! キノコバエに起こる悲劇と植物の驚きの戦略


花の入り口にはねずみ返しがついているため、キノコバエは入り口からも出られない

 マムシグサという野草の花は、一説ではキノコの香りを発しているといわれています。キノコが大好きなキノコバエはその匂いに惹きつけられて、マムシグサの長い花瓶のような花の中に入ります。そこがオス株であれば、キノコバエの体におしべの花粉がくっつき、花の下部には穴があるのでキノコバエは外に出ることができます。次にそのキノコバエが再びだまされて入った先がメス株だった場合、マムシグサのめしべにはキノコバエに付着している花粉がくっつき、受粉が成功します。しかし、メス株には出口がありません。マムシグサの受粉に利用されたキノコバエは、中で命が尽きるのを待つしかないのです。

アオムシの体の中から飛び出す、大量の幼虫の謎


モンシロチョウの幼虫はさまざまな寄生虫の被害に合うため、成虫になれるのは一握りだ

 アオムシ(モンシロチョウの幼虫)はキャベツなどの葉を食べますが、キャベツも黙って食べられているわけではないようです。キャベツは、自身が食べられると「カイロモン」と呼ばれる物質を空中に放出します。アオムシサムライコマユバチという寄生バチの一種は、このカイロモンを嗅ぎつけ、その場所へ向かいアオムシに卵を産みつけます。
 産みつける卵の数は数十個。アオムシの体内で孵化し、生まれた寄生バチの幼虫は14日ほどアオムシから栄養を摂り続けます。そして、アオムシがサナギになる直前に、画像のように多くの幼虫が体を食い破り出てくるのです。

文=山と溪谷社 イラスト=一日一種

山と溪谷社
2021年4月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

山と溪谷社

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1930年創業。月刊誌『山と溪谷』を中心に、国内外で山岳・自然科学・アウトドア等の分野で出版活動を展開。さらに、自然、環境、ライフスタイル、健康の分野で多くの出版物を展開しています。