専門医が教える「抗がん剤の副作用」本当の話――患者さんは迷ったらすぐ医師に相談を!

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がん療法の標準治療の一つである「抗がん剤治療」。抗がん剤と言えば、「副作用が怖い」と思っている方も多いのではないでしょうか? しかし、吐き気や脱毛など、多くの人が想像する副作用のイメージの多くは、抗がん剤の副作用ではないと思われます。では、抗がん剤の副作用にはどんなものがあり、なぜ起こるのでしょうか? 九州大学病院の呼吸器科内科学の専門医である田中謙太郎先生にお話をうかがいました。

※本稿は『あなたにとって最適な「がん治療」がわかる本』(がん情報サイト「オンコロ」・著)を再編集しています。

副作用が起きる原因と予防策を知ろう!

まず、がんの治療に使われる薬には、主に次の4つのタイプがあります。

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1. 細胞分裂が激しい細胞に作用する抗がん剤

2. がん細胞が持つ特有の分子に結合して作用する分子標的薬

3. ホルモンが関係するがんに使われるホルモン療法

4. 免疫療法の一種である免疫チェックポイント阻害剤

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いずれの薬にも副作用は必ずあります。

なかでも抗がん剤は、ほかの薬に比べて効果の出る量と副作用の出る量の差が小さく(効果を狙うと副作用が出やすい)、現れる副作用の種類や強さには個人差が大きいのが特徴です。

【九州大学病院・田中謙太郎先生にインタビュー】

「怖い・苦しい」イメージがある副作用の実態は……?

そもそも、がん細胞というのは自分の細胞からできています。そのため、抗がん剤(薬)でがん細胞を殺そうとすると、どうしても正常な細胞にも影響を与えてしまいます。これが副作用です。

特に、昔からある殺細胞性の抗がん剤は、「増殖が激しい」というがん細胞の特性を利用しているので、正常な細胞でも増殖が活発な細胞、たとえば髪の毛や皮膚、口の粘膜、腸の粘膜などが影響を受けます。

ほかに、最近では分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害剤など、新しいタイプの抗がん剤も使われるようになってきました。

分子標的薬は、がん細胞は通常の細胞が遺伝子変異したものなので、その変異した遺伝子だけを狙う薬です。では、ほかの正常な細胞には影響がないかというと、薬剤は、正常細胞に存在する変異のない遺伝子にも作用しうるので、やはり副作用が起こります。

免疫チェックポイント阻害剤の場合は、がん細胞を狙い撃ちにしようとするのですが、その際に免疫反応が起こってしまうので、副作用が起こります。

つまり、どのタイプの抗がん剤を使ったとしても、副作用自体は起こるということです。副作用の重さは、抗がん剤の濃度や効果によって変わってきます。

前提として、近年は副作用のコントロールが重視されていて、昔のがん治療のように副作用に苦しみながら耐えることは少なくなっています。

とはいえ、副作用は患者さんにとって未知のもの。怖いイメージがあることが多いので、代表的な副作用と、副作用が起きた場合にどうすればよいかをお話しします。

代表的な副作用とその対処法

起こりやすい副作用としては、殺細胞性抗がん剤の場合は、脱毛、口内炎や、下痢・嘔吐といった消化器の症状が自覚症状としては多いです。ほかには白血球が減る、貧血になる、などの採血検査で明らかとなる症状も多いのではないかなと思います。

分子標的薬については、皮疹、手足口症候群や、薬剤による肺炎など、薬剤ごとに特徴的なものが多くあります。

免疫チェックポイント阻害剤に関しては、頻度は非常に少ないのですが、臓器が自己免疫疾患のような反応を起こすことがあります。薬剤性の肺炎に加えて、膵臓の炎症なら糖尿病、肝臓なら肝炎、胃腸なら胃腸炎、神経なら神経炎や筋炎というように、各臓器で自己免疫の病気が起こる可能性があるのです。

殺細胞性の抗がん剤、分子標的薬ともに気をつけなければならないのは、劇症の薬疹です。口の中や皮膚にやけどのような激しい炎症が起こる、スティーヴンス・ジョンソン症候群というのもあります。

いずれの抗がん剤でも起こりうる薬剤性の肺炎も、治療が遅れると死に至ることがあります。あとは糖尿病も、免疫チェックポイント阻害剤で、劇症型と呼ばれる1型の糖尿病が起こることがわかってきました。

怖い要素ばかりお伝えしましたが、これらは必ず起こるわけではありません。「副作用が劇症化することも、まれにある」と覚えておいたら、いざというときにうろたえずに済む、という程度で受け止めてください。

これらの副作用などのことは、抗がん剤治療が始まるときお渡しする、同意文書にも書かれています。患者さんは同意文書をよく読んで、わからないことや不安なことは主治医に聞くようにしてください。

入院中であれば、副作用が重く出すぎている場合や、劇症化が疑われる場合は、看護師や医師がすぐに気づいて投与をやめたり、対処したりできます。

通院治療で、副作用が重く出ていたり、大丈夫かなと心配になったりした場合は、症状をメモしてください。時間の経過と症状を記録して、病院にすぐお電話をくださるか、次の診察時に伝えてください。

患者さんは主治医に副作用のことを話さない方が多いです。治療の効果など、ほかに聞きたいことがあったり、副作用のことを話すのは悪いというような遠慮があったりするのかもしれません。でも、診察のときに医師に話してくださっていいですし、チーム医療ですから看護師や薬剤師に伝えてもらっても大丈夫です。

副作用の重さと治療の効果は比例しない

また、「副作用が重いということは、よく効いているということだ」というふうに考えて、副作用が出ても我慢する人もいます。

でも、それは殺細胞性の抗がん剤ではあまり関係がありません。副作用の出方は人それぞれなので、1.効果が高くて副作用が低い方、2.効果が低くて副作用も低い方、3.効果が高くて副作用も高い方、4.効果が低くて副作用が高い方という、効果2×副作用2=4パターンが起こり得ます。やってみないことには、あなたの副作用はどの程度出ますよということは申し上げられないのですが、副作用と効果は比例しないことは確かです。

一方、免疫チェックポイント阻害剤は、副作用が出る方は効果も出る、効果と副作用は相関するというデータがあって、論文も出ています。ですから、免疫チェックポイント阻害剤であれば、多少副作用が強く出ても、薬剤性の肺炎と糖尿病、激しい下痢などには気をつけながら治療を継続する場合もあります。

とくに劇症型の闘病病は、発症直後は数時間で意識障害などになってしまうことがあります。危機を乗り越えれば、治療自体はインスリン下で継続できますが、死に至る恐れもありますので、細かな注意が必要になってきます。

一方で重症化した肺炎や下痢が生じた場合、治療の再開はしませんので、そうならないように注意が必要です。きめ細かく注意し、対応するためにも、先述したように患者さんには症状やその経過の記録を心がけていただきたいです。

かつては抗がん剤というと、つらい副作用に耐え、失いたくないものも失わざるを得ず……というイメージがあったかもしれません。

しかし、抗がん剤は近年、めざましい進化を遂げている分野で、どんどん新しい薬剤が出てきています。ですから、がんの種類によって必ず使ったほうがいい薬剤もありますが、患者さんの希望や優先順位を踏まえて決められる選択肢も増えています。

患者さんは、遠慮せずにお仕事のこと、脱毛についてなど、優先順位を考えていただいて、「これは守りたい(たとえば人前に出る仕事なので脱毛は困る。水仕事があるので痺れるのは困るなど)」という希望・優先事項があれば、教えていただきたいです。その上で、医師とよく相談して、決めていただくことが必要だと思います。

田中 謙太郎(たなか けんたろう)
九州大学病院 呼吸器科 内科学 助教。2001年九州大学卒業。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

日本実業出版社
2021年4月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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