【話題の本】『国立代々木競技場と丹下健三』豊川斎赫(さいかく)著

ニュース

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

 ■世界遺産の登録も目指して

 「まずコンクリートの造形に度肝を抜かれた。中に入ると天井から光が降りてきて、プールの水面がキラキラ輝いて…。すごいな、自分もこんなふうに人を感動させたい、と」

 新しい国立競技場の設計に携わった隈(くま)研吾さんは、国立代々木競技場を初めて訪れた10歳当時の思い出を、以前、こんなふうに語ってくれた。前回の1964東京五輪の水泳・バスケットボール会場として丹下健三が設計した同競技場は、2020東京五輪でもハンドボール会場として使用予定だ。高張力による吊(つ)り屋根が美しい建築は、オリンピックのレガシーとして世界的にも高く評価されている。

 この偉大な建物はどのように造られ、使われ、管理されてきたのか。本書は、成長の時代の象徴から成熟の時代の象徴へ、20世紀後半の日本と歩みを共にしてきた代々木競技場を多角的に振り返り、論じている。

 5年前には隈さんら有識者を中心に「代々木屋内競技場を世界遺産にする会」が発足、登録を目指す動きもある。本書は英語版も同時刊行。「国内外に広くアピールし、将来にむけた歴史的資料として残すものです」とTOTO出版の担当者。レガシーとは、不断の努力で受け継がれていくのだとわかる。(TOTO出版・1760円)

 黒沢綾子

産経新聞
2021年5月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

産経新聞社「産経新聞」のご案内

産経ニュースは産経デジタルが運営する産経新聞のニュースサイトです。事件、政治、経済、国際、スポーツ、エンタメなどの最新ニュースをお届けします。