『偉人名言迷言事典』
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【聞きたい。】真山知幸さん 『偉人名言迷言事典』 壁を乗り越えるヒントにも
[文] 三保谷浩輝
偉人研究家として45冊の著書を手がけてきた真山知幸さんが、異色の名言事典に挑んだ。古今東西の偉人100人の「名言」に、泣き言や愚痴、トンデモ系の「迷言」を配し、偉人の列伝にまとめている。
「両極端の言葉を組み合わせ、立派な業績と人間性の両面から見ることでリスペクトしながらより身近に感じられる偉人たちの生き様を描ければと」
たとえば、名言「天は人の上に人を造らず」がある福沢諭吉には、文筆指南で「猿に見せるつもりで書け」の迷言もあり、繊細さと豪快さがうかがえる。
また落ちこぼれから「20世紀最大の天才」になったアインシュタインの「成功した人間になろうとするな。むしろ、価値のある人間になろうとせよ」を名言ベスト1に挙げ、「自分らしさ、価値の追求という姿勢は生きる指針になる」。逆に迷言1位は太宰治が夫人に言った「かげで舌を出してもよいから、うわべはいい顔を見せてくれ」で、「このほうが人間関係円滑にいくと思う」と評する。
名言・迷言は時代背景や年齢にも左右される。松下幸之助の「血のしょんべんがでるほど努力しましたか」は、「かつては人々の気持ちを奮い立たせる名言だったが、今はパワハラになったりも」。若き日の棟方志功が広言した「わだばゴッホになる!」も「当時は迷言だが、実は名言だった。言葉って不思議、生き物だなと思いますね」。
偉人の名言・迷言を「自分が壁を乗り越えるヒントにしたり、気が楽になったり。そういう効果がある」と指摘。真山さんも学生時代に就活で悩み、小林秀雄の言葉「絶望するにも才能がいる」に勇気づけられた経験が、偉人研究・執筆につながったとか。名言の効果は偉人だけに限らない。
「近しい仲では、誰もが無意識に名言を口にして人を救ったりしているはずです」。何だか勇気づけられる名言だ。(笠間書院・2200円)
三保谷浩輝
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【プロフィル】真山知幸
まやま・ともゆき 昭和54年、兵庫県生まれ。同志社大法学部卒。業界誌出版社で編集長を務めながら偉人研究を続け、令和2年独立。著書に『君の歳にあの偉人は何を語ったか』『ざんねんな偉人伝』など。