『家老の忠義』
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『家老の忠義 大名細川家存続の秘訣』林千寿著
[レビュアー] 産経新聞社
乱世をうまく生き延びて、江戸前期に肥後(現熊本県)54万石の藩主に納まった細川家。その成功の陰に、名家老として知られる松井康之と息子の興長(おきなが)の親子2代にわたる絶大な貢献があった。
戦国遺風がまだ残る江戸初期、家臣の忠義の対象は専ら大名個人であり、代替わりで離反に至ることも珍しくなかった。現に、前肥後領主の加藤家改易は家老の私利追求が一因となっている。そんな中、松井親子は時に主君への諫言(かんげん)も辞さぬ態度で細川家を支えた。その背後に、忠義の対象を領民まで含んだ「御家」へと拡大させた忠義観の転換があったことを描き出す。(吉川弘文館・1870円)