押し寄せる電子化の波。紙の本がメインの印刷会社は時代にあらがえるのか―。本を「造る」という仕事に誇りを持つ印刷営業の男性が主人公の小説。突貫スケジュールを求める編集者や仕様を急に変更する装丁家に振り回されながらより良い本造りを目指す。
映画のエンドロールと違い、本の奥付は一般的にシンプル。印刷営業や印刷機を操作するオペレーター、インクを調合する職人といった多様な職種の人々が載ることはない。本書は、こうした職種にも光を当てている。文庫化に当たり、書き下ろし掌編「本は必需品」を収録。(安藤祐介著、講談社文庫・1012円)
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2021年6月13日 掲載
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