クリエーターの切ない懊悩(おうのう)を描いた物語。主人公は売れっ子とはいえない放送作家。長年の夢だった長編小説を書き終えた。力作だから、早く誰かに読んでほしい。意気揚々と動き出す。
妻の枕元に原稿を置いたが、気づいてもらえない。芸術家の後輩に会ってみると、彼の作品を買う羽目に。同僚には仕事の悩みを打ち明けられる。誰に会っても「読んでほしい」と言えず、相手の話を聴いてばかり。小説が読まれるのはいつになるやら。
著者は元芸人の放送作家。承認欲求をめぐるユーモラスな展開に引き込まれる小説デビュー作。(幻冬舎・1540円)
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2021年7月25日 掲載
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