<東北の本棚>東北の「秘境駅」も紹介

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<東北の本棚>東北の「秘境駅」も紹介

[レビュアー] 河北新報

 作家やエッセイスト、文芸評論家ら13人の書き手による鉄道の旅の記録を収めた。うち4人が、JR奥羽線(福島-青森)や花輪線(好摩-大館)など、東北を走る鉄路を紹介している。
 秋田市出身のコラムニスト、えのきどいちろうさんは2012年、奥羽線や、仙台と山形の両市を結ぶ仙山線などの「秘境駅」を訪ねた。今年3月に廃止された赤岩駅(福島市)、14年廃止の西仙台ハイランド駅(仙台市青葉区)など、既に訪ねられなくなった駅を含む貴重な記録だ。
 文芸評論家の川本三郎さんは16年、JR釜石線を走るSL銀河などに乗車。宮沢賢治の故郷・花巻市や、学生時代を過ごした盛岡市などに立ち寄り、賢治の描いた理想郷に思いをはせた。
 途中で「何を聞いても丁寧に答えてくれる」頼もしい女性ボランティアガイドに出会ったという。賢治の墓所やかつて花巻を走っていた鉄道車両の展示場所などを即答してくれる博識ぶりが、小気味いい。地元の人がいかに、地域や賢治を愛しているかも伝わってくる。
 13の旅は11~17年に行われ、12~18年に雑誌「旅と鉄道」に掲載された。各稿ともタッチは軽く、通勤通学の列車内でちょっと旅気分を味わうにはちょうどいい。(矢)

 天夢人03(6413)8755=1760円。

河北新報
2021年8月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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