【産経の本】『零戦VSグラマン 日米ライバル戦闘機対決』野原茂著

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■究極の日本機かパワーの米機か

太平洋戦争で主力艦上戦闘機となった日本の零戦(ゼロ戦)と米国のグラマンのメカニズムを徹底比較している。零戦に関する本は少なくないが、両機を比較し、どこが優れていたのかを検証した一冊は珍しい。

エンジン、プロペラ、操縦室などを希少写真や精密図面約450枚を交えて解説。格闘戦を得意とする零戦に対し、グラマンによる一撃離脱戦法や「サッチ・ウィーブ」と呼ばれる挟み撃ち戦術もイラストとともに詳しく伝えている。

零戦を製作した三菱重工とグラマン社の戦闘機開発史の章では、新興のグラマン社が技術者らの努力で海軍艦戦市場を独占するまでの様子や、堀越二郎技師による零戦誕生までの道のりが描かれる。日本海軍航空本部からの十二試艦上戦闘機(のちの零戦)への要求は、実現困難と思えるほど高性能なものだった。技術と英知のすべてを注ぎ込み、究極の機体を完成させた堀越氏の不屈の技術者魂は鬼気迫るものがある。

カラーイラストで再現した、撃墜王・坂井三郎少尉の硫黄島防空戦、ミッドウェー海戦時の空母「赤城」搭載の零戦対グラマン、ガダルカナル島上空の台南航空隊零戦とグラマンの描写は迫力満点だ。(潮書房光人新社・2530円)

産経新聞
2021年7月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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