第20回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が決定 『音楽の危機』『こどもホスピスの奇跡』

文学賞・賞

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 第20回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が26日に発表された。小林秀雄賞は岡田暁生さんの『音楽の危機 《第九》が歌えなくなった日』(中央公論新社)が、新潮ドキュメント賞は石井光太さんの『こどもホスピスの奇跡 短い人生の「最期」をつくる』(新潮社)が受賞した。

 小林秀雄賞を受賞した『音楽の危機 《第九》が歌えなくなった日』は、新型コロナウイルス感染拡大でライブやコンサートが中止となった危機的状況や急速に普及するストリーミング配信など、音楽の未来について考察した一冊。

 詩人の渡邊十絲子さんは、「不要不急とはなにかということばかり考えた」と吐露。「この問題を、わたしの知る限り最も正面から扱った本」と本作を取り上げ、「人と人とが同じ場所に集い、時間の流れを共有することが音楽の本質。それをどうやって守るか、生き延びさせるか。これは音楽だけの問題ではない」(週刊新潮・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/648399

 著者の岡田さんは、1960年京都市生まれ。大阪大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在は京都大学人文科学研究所教授。リヒャルト・シュトラウスのオペラを論じた「〈バラの騎士〉の夢』でデビューし、『オペラの運命』でサントリー学芸賞を受賞。また、『西洋音楽史』では、1000年あまりにおよぶ西洋音楽の流れを明快かつ魅力的に物語り、各界から高い評価を受けている。

 新潮ドキュメント賞を受賞した『こどもホスピスの奇跡 短い人生の「最期」をつくる』は、余命少ない子供たちに学びの機会を与え、楽器の演奏や泊まりのキャンプなど、家族と生涯忘れえぬ思い出をつくる施設「TSURUMIこどもホスピス」の誕生、そして日々の奮闘を綴ったノンフィクション。

 ノンフィクション作家の佐々涼子さんは、「子どもたちにとって、学び続けることがどれほど未来に希望をつなぎ、成長を実感することなのかを読者は彼に教えられるだろう。その健気さ、ひたむきさに、悲しみより感動で心を震わされる。「よく生きたね」、そう言って思わず拍手をしたくなる」と述べ、「読めば、全ての子に深く生きる機会をと願わずにいられなくなるだろう」(波・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/660666

 著者の石井さんは、1977年東京生まれ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞はどちらも2002(平成14)年に創設。元は1988(昭和63)年に創設された人文科学と社会科学を対象とした新潮学芸賞から分離された賞。小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外の日本語による言語表現作品を対象とした学術賞で、自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品に与えられる。新潮ドキュメント賞は、雑誌掲載も含むノンフィクション作品を対象とした文学賞で、ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品に与えられる。

 昨年は、精神科医の斎藤環さんと歴史学者の与那覇潤さんが、心が楽になる人間関係とコミュニケーションのあり方を提案した一冊『心を病んだらいけないの?』(新潮社)が小林秀雄賞を受賞。アマゾンという「巨大企業の光と影」を明らかにしていくノンフィクション作品『潜入ルポamazon帝国』(小学館)が新潮ドキュメント賞を受賞している。

Book Bang編集部
2021年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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