【産経の本】『第二次大戦 残存艦船の戦後』大内建二著

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■戦争乗り越えた150隻の航跡

先の大戦が終結したとき、国内では戦艦、空母、巡洋艦などの主力艦から小型艦艇まで、多くの艦船が失われていた。商船も同様だ。本書は、生き残った約150隻の行方を追ったノンフィクションである。

戦争を乗り越えた艦船たちは、どのような運命をたどったのか。戦艦「長門」と軽巡洋艦「酒匂」はビキニ環礁の米核実験の標的となり、駆逐艦「雪風」は戦勝国に対する賠償艦として中華民国に引き渡された。南極観測船や海上保安庁の巡視船に受け継がれた艦船もある。

中でも民間船の興安丸は、役割が転々と変わった。終戦直後は朝鮮半島からの邦人引き揚げ者の輸送にあたり、朝鮮戦争では米軍に徴用された。その後、中国やソ連からの旧日本軍将兵抑留者の引揚輸送船、遊覧船、イスラム教徒のメッカ巡礼船―と続き、昭和45年に解体された。昭和天皇が全国巡幸で山口県を訪れた際、著名な旅館・ホテルは荒廃したものが多かったため、たまたま停泊していた同船に宿泊された挿話も。

本書では、こうした日本経済再開の原動力となったものなど、あまり明かされることのなかった艦船の航跡を、図面や写真を交えてわかりやすく伝えている。

産経新聞
2021年8月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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