史上最高値は終わりの始まり!? バイデノミクス下の米国株相場のゆくえ

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史上最高値を更新し続ける米国株相場。バイデン政権の1.9兆ドルにも及ぶ景気刺激策もありマーケットは沸いているが、そんな世間のバラ色予想とは裏腹に、ある識者はこの状況へ警鐘を鳴らしている。「相場が高値を極めたとき相場が崩壊する」――。本記事では、ニューヨークを拠点として外国為替コンサルタント会社の代表取締役を務める若林栄四氏が著した『黄金の相場予測2022 バイデノミクスの深層』の冒頭を紹介する。

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本著は2021年3月から書き始めた。それは筆者の見方で、今年3~4月以降は米国株式の崩壊のリスクが高まっているという問題意識があったからである。

時あたかも経済ジャーナリズムは米国経済のバラ色の見通しを例外なく強調し、そのうえで株価の上昇を予測していたのである。

数年前から米国の株式相場が危ういという相場観を持っていたが、筆者の日柄の読みが拙く、ここ1~2年は苦しい展開であった。

おまけに今年はコロナウイルス禍からの脱却で、明るい米国経済の先行きが喧伝されるなかで、筆者の方法論である黄金律からの分析は、世間の見方とまったく正反対のバブル破裂を示唆していた。

バラ色予想と相場の原則

世間一般のそういうバラ色予想のなかで、バブル破裂を説いても、まともに相手にされないリスクは十分にある。

しかし、相場は時間の関数であり、決まった時間がくれば崩壊するというのが、筆者の哲学である。

相場が高値を極めたとき相場が崩壊する。これが、相場が相場である所以である。天井というのは高値が極まったときに形成されるのが相場の原則であり、その値ごろと日柄は黄金律で律することができると信じている。米国経済のバラ色予想と、株式相場の天井形成および崩壊とは何も矛盾しないのである。

しかし、一般的に相場は、とくに株式相場は、景気の関数であるという誤った考え方が広くいきわたっている。相場の先行きを論じるにあたって、マーケット関係者、エコノミストはまず景気の先行きを現状から解析し、その解析を踏まえて相場の先行きを論じるという誤った方法論しか持っていないのである。

もちろんマーケット関係者が憧憬する中央銀行FRBは、エコノミスト集団であることから、間違えた方法論で相場の先行きを論じる。時には本業である景気の先行きも、ろくに見通せないのである。彼らの金科玉条である経済学なる社会科学が、ほとんど実体経済の推移予測にミーニングフルな貢献をするほどの成熟度に達していないからである。

物理学でいえばニュートン以前の未開度にあるのが、経済学という学問だろう。私事で恐縮だが、筆者は大学入学に際して、法学部か経済学部の選択があったが、高校生にでもわかるほどの、経済学なるもののいい加減さに迷わず法学部を選んだ。経済学なるもののまやかしを本能的に察していたということか。

独自の黄金律による分析

さてFRBにして誤った方法論しか持っていないから、ウォール・ストリートのエコノミストの振り回す理屈は痛ましいほど浅はかであり、かつ2~3カ月のデュレーション(耐久度)しか持ちえないのである。

「Never try to time the market」はウォール・ストリートの格言で、日柄を考えるのは邪道とされている。なぜ邪道になるのかといえば、いろいろな方法で真理に到達しようとしたが、決して成功しなかったからである。

つまり日柄を考えることは、時間の無駄であり、したがって、相場の二大要素である値ごろと日柄のうち、縦軸の値段ばかりを研究し、議論し、日柄すなわち時間軸(横軸)の研究は放擲してきたのである。

しかし、筆者はその誰もやらない日柄の研究に過去30年を費やしてきた。

なぜなら、30年前に黄金律を具現する正五角形(ペンタゴン)というツールと出会い、価格と時間の整合性を計る世界で唯一つの手段を手に入れたからだ。ただ、この黄金律を使った分析はむずかしい。なぜなら時間と値ごろの両方を正しく推理することは神に近づくことであり、基本的に人間業ではないからである。

昨年までの筆者の米国株崩壊シナリオは、クレディブルな日柄を打ち出すことができず、史上最低の大統領が差配する国の株が崩壊しないわけがないという、アンチ・トランプの情念に支配された誤りであった。

トランプが大統領のあいだに株が暴落してほしいというサブジェクティビティー(主観、自己本位)に支配されていては決して正しい予測はできないのである。自らの至らなさでご迷惑をかけた方々にお詫び申し上げる。

その憎きトランプが退陣して、オブジェクティビティー(客観、偏見のない)の世界に、戻ることにより、今度は正しい予測を打ち出すことができるのではないかと考えている。今回の試みは、黄金律で大ざっぱに日柄を特定し、その日柄の範囲内で、黄金律にふさわしい価格が示現すれば、それが天井と認定するやり方である。

具体的に例示すると、もともと3月25日が正中点とみていたNYダウは、5月10日まで2分の1四半期の誤差で天井示現が遅れた(その高値3万5091ドルはまだ更新されていない。7月9日現在)。2000年の第1次バブル天井の際、NYダウは1月14日に天井をつけ、3月10日にはNASDAQが天井、3月24日にSP500が天井と、ほぼ10週間にわたる天井圏推移があってから、すべてが崩壊した。

米国相場を待っているのは…

この前書きを書いている7月10日現在、5月10日のNYダウ高値からちょうど2カ月である。2000年の例ではそろそろNASDAQもSP500もそれぞれの天井をつけてバブル破裂に入ったタイミングである。

3月から書き始めた本著はいろいろなやり取りで8月刊行となったが、最終校正の7月上旬は、日柄として相場天井にふさわしいタイミングである。第2次ITバブル天井である。筆者の相場予測で最も劇的だったのは2012年2月からのドル円相場の急騰である。

現実には2011年10月31日に75円53銭の底値を見たが、2012年2月に76円で2番底を打ちドルが急騰、2015年6月に125円まで円安が進行したシークエンスである。

そのシナリオはその実現の数年前から黄金律の分析で、ほぼフルコンフィデンスのシナリオであった。時間、レベルともドンピシャだった。第2次ITバブル崩壊は、3月の執筆開始時はそれほどのコンビクションはなかったが、7月時点では2012年2月のドル円シナリオに匹敵する確信度の高さである。

おそらく本著が書店に並ぶころには、すべての指標が天井をつけ、最初の相場急落を見せているものと考えている。それが38年にわたって繰り広げられた、大ブルマーケットの終焉で、これから数年にわたるベアーマーケットの始まりとみたい。米国を待っているのは、インフレではなくデフレなのである。

※本記事は、2021年7月10日時点での情報に基づくものです。

若林 栄四(わかばやし えいし)
1966年京都大学法学部卒業。東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。同行シンガポール支店為替課長、本店為替資金部課長、ニューヨーク支店為替課長を経て、1985年よりニューヨーク支店次長。1987年、勧角証券(アメリカ)執行副社長。1996年末退職。現在、米国(ニューヨーク)在住。日本では外国為替コンサルタント会社である(株)ワカバヤシ エフエックス アソシエイツの代表取締役を務める。歴史観に裏づけされた洞察力から生み出される相場大局観で、国内外の機関投資家、個人投資家に絶大な人気を誇る。著書に『覚醒する大円高』『ヘリコプターマネー』『パーフェクトストーム』(以上、日本実業出版社)などがある。

若林栄四(ストラテジスト)

日本実業出版社
2021年8月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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