【産経の本】『塗りつぶされた日本人の心』喜多由浩著

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■塗りつぶされた日本人の心

多くの唱歌や童謡は、先の大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の意向を〝忖度(そんたく)〟した日本の官僚らによって墨で塗り潰されたり、新しい教科書から排除されたりした。

これらの歌詞には先人が大切にした価値観や美徳がある。例えば明治後期の唱歌「水師営の会見」は戦争を賛美した歌でも英雄譚(たん)でもない。軍歌にも当てはまらない。いわばラグビーの「ノーサイド精神」を表したものである。現代社会には農工具をつくったり修理したりする鍛冶屋は少なくなったが、大正元年初出の「村の鍛冶屋」は「ものづくり」の誇りにかけては誰にも負けないという技術立国・日本の伝統を伝えている。

本書のもう一つの大事な要素は、日本統治下の台湾や朝鮮、満州の唱歌である。

日本人の教育者たちは、異民族の子供たちが親しみをもって歌えるように、現地の風俗や自然、民族の偉人や名所・旧跡を盛り込んだオリジナルの唱歌をつくった。こうした先人の行いに日本人は誇りを持っていいし、今も思考停止のごとく見直しが行われないのはおかしい、と著者は強調する。日本人のやったことは日本人の手で取り戻すしかない。(産経NF文庫・891円)

産経新聞
2021年9月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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