【聞きたい。】関口高史さん 『戦争という選択 〈主戦論者たち〉から見た太平洋戦争開戦経緯』

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戦争という選択

『戦争という選択』

著者
関口高史 [著]
出版社
作品社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784861828645
発売日
2021/08/16
価格
2,970円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】関口高史さん 『戦争という選択 〈主戦論者たち〉から見た太平洋戦争開戦経緯』

[レビュアー] 磨井慎吾

■「無謀」が受容された理由


関口高史さん

真珠湾攻撃から間もなく80年。日本はなぜ対米開戦という無謀な意思決定に至ったのか。当時の人は愚かだったから、今は違うと切り捨てるだけでは、同じ失敗を繰り返しかねない。

本書は開戦の決断に至る昭和16年当時の日本側の動きを追体験することで、指導者の多くが戦争回避を目指していたにもかかわらず日米交渉が暗礁に乗り上げ、陸軍中枢の一部が唱えた主戦論が最終的に説得力を持ちえた理由を探る。

「要因は3つあると思います。まず、主戦論はいいことばかり言って期待を持たせた。次に、その曖昧性によりさまざまな人に受け入れられた。さらに最も重要なのが、そもそも国の形が軍事で物事を解決しようとする形に変わっていたことです。今さら非軍事的な形で解決しようとしても、体に合わないやり方となってしまって無理だった」

著者は防衛大学校で戦略を講じていた元陸上自衛官。近年は先の大戦をよく知らない防大生が多く、講義するつもりで執筆したという。日米開戦の経緯についてはすでに政治外交史分野で多くの研究蓄積があるが、本書は戦略論や安全保障学の観点から考察する。

「実際に行われた判断は軍事的判断だから、まずその論理を理解しなければ」

直接の引き金は米国の石油禁輸を招いた16年の南部仏印(フランス領インドシナ)進駐というのが定説だが、本書はそうした軍事的解決を志向したがる国の構造ができたのはなぜかという問題意識から、遠因として明治以降の近代史にも多くの紙幅を費やした。

現在は国家体制も意思決定機関も戦前とは様変わりしているが、学べるものは多いという。「主権者である国民が安全保障に無関心ではいけないし、国際情勢の客観的認識や国力の統一と運用など、戦争で得た教訓を戦争を防ぐために生かしていくべきだと思います」(作品社・2970円)

磨井慎吾

   ◇

【プロフィル】関口高史

せきぐち・たかし 昭和40年、東京都生まれ。防衛大学校総合安全保障研究科国際安全保障コース卒業。安全保障学修士。元防衛大准教授(予備1等陸佐)。著書に『誰が一木支隊を全滅させたのか』など。

産経新聞
2021年10月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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