『歌舞伎役者 市川雷蔵 のらりくらりと生きて』大島幸久著
[レビュアー] 産経新聞社
「眠狂四郎」などの映画で知られる伝説の大スター、市川雷蔵(昭和6~44年)は、名門・市川寿海の養子として八代目市川雷蔵を襲名した歌舞伎俳優だった。
昭和29年に舞台から映画界に転じ、やがて雷さま、雷蔵ブームとなるが、「歌舞伎から離脱する後悔はなかったのか」と演劇ジャーナリストの著者は問いかける。そして39年に10年ぶりとなる歌舞伎舞台で待望の大役「勧進帳」の富樫を演じた雷蔵の胸中を探る。
「のらりくらり」の生き様と思いを書籍や記事、インタビューなどから浮かび上がらせる。歌舞伎役者・雷蔵への愛に満ちた一冊。(中央公論新社・2200円)