真面目な「働かないおじさん」を働く人に変えるテクニック

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

「働かないおじさん問題」のトリセツ

『「働かないおじさん問題」のトリセツ』

著者
難波猛 [著]
出版社
アスコム
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784776211488
発売日
2021/09/22
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

真面目な「働かないおじさん」を働く人に変えるテクニック

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

・一日中、新聞やスマホばかり眺めていて仕事をしない人

・営業に行くふりをして、社用車で居眠りをしている人

・PCやコピー機が使えず、部下にやってもらう人

“働かないおじさん”と聞いて、多くの方はこういった人を思い浮かべるのではないでしょうか?

ところが、意外や意外。人事コンサルタントである『「働かないおじさん問題」のトリセツ』(難波 猛 著、アスコム)の著者によると、いま働かないおじさんと呼ばれている人の多くが「真面目でコツコツ働く人」なのだそうです。

ビジネスを散りまく環境が大きく変わり、会社が求める働き方や成果が劇的に変化しているなか、いままでどおり真面目にコツコツ働いている人の生産性が低下し、会社側の期待とのギャップを招いているといいます。

とはいえ、そんな彼らを無理に変えようとしても、なかなかいい結果には結びつかないもの。そこで、本書が役に立つわけです。

私がみなさんに伝えたいのは、強制的に変化させるのでも奇跡を待つのでもなく、 不本意ながら「働かないおじさん」となっている方が、 適切な働きかけで自らの意思で、自らの人生を充実したものにするために前向きに変化に踏み出す方法です。(10ページより)

こうした考え方に基づく本書の第6章「もしも『働かないおじさん』と同じ部署になったら?」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

「ボスマネジメント」で働きやすい状態に変える

「働かないおじさん」に必要なアドバイスをしようとしても、多くの場合は年長者だったり職位が上の人だったりするため、直接意見するのを躊躇してしまいがち。

いいかた次第では、トラブルを誘発する可能性すらあります。

そんな場合、「働かないおじさん」や自分の上司を巻き込んで上手く動いてもらうことも、一つの解決策になります。このように、部下が上司を動かして、仕事の目的を達成しようとする行動を「ボスマネジメント」と呼びます。(217ページより)

ボスマネジメントのポイントは、「上司の視点で、抱えている課題やニーズをくみ取りながら提言をしていく」こと。

自分(部下)の視点だけで「こうしてください」と要求するだけでは、複数の課題や緊急性の高い問題を抱えている上司としては“動く動機づけ”が持てず、優先順位が上がらないというのです。

そこで、「上司としては、どんな問題が解決できるとうれしいのか」「組織をどういう状態にしたいのか」「上司の上司は、私の上司にどんなことを期待しているのか」など、“上司のニーズ(will)”を想像しつつ、そこに“自分の希望(will)”を重ねる文脈を探してみるべきだということ。(218ページより)

「働かないおじさん」の直属の上司に相談してみる

ところで“「働かないおじさん」直属の上司”は、当然のことながら問題を自らの課題として捉えているはず。したがって、相談しやすい上司だといえます。

「自分としては、あの先輩にこうなってほしい」

「その状態は、上司にとっても望ましい」

「その状態は、先輩本人にとっても望ましい」

というようなゴールを共有できれば、「その実現に向けて、上司にやってほしいこと」「同僚として協力できること」「本人が努力すること」が議論できるようになるわけです。

このように、相手の見ている視点や物語(ナラティブ)を意識しながら共通点や解決策を一緒に考えるコミュニケーションを、「ナラティブ・アプローチ」と呼び、その考え方を紹介した『他者と働く〜「わかりあえなさ」から始める組織論〜(NewsPicksパブリッシング)』は人事の領域で大きな話題になりました。(219ページより)

「相手(上司や働かないおじさん)にも、相手が見えている景色や物語がある」ということを意識するだけでも、組織内のコミュニケーションは円滑になるわけです。(219ページより)

「上司は偉い」の先入観を捨てる

また、ボスマネジメントを使いながら「働かないおじさん問題」に対処する現実的な方法のひとつとして、「役割分担(ロールプレイ)」が有効な場合があるそう。

「上司は偉い」「指示は常に上から」というわけではなく「上司は役割」「部下も役割」にすぎないもの。

上司達の指示命令ばかりでなく、ときには「お互いに協力して問題を解決する」「部下が絵を描き、上司に演じてもらう」ことも必要なのだとか。

例えば、営業方法を変える必要があるベテラン社員に対して、新任の上司が頭ごなしに説得しても反発されるケースがありました。

この上司は「じっくり話を聞く」スタイルは得意でも、「エネルギッシュにチームを引っ張る」スタイルは得意ではありません。

ベテラン社員も、「何で新参の上司に指導されなければいけないんだ」というプライドが邪魔をして、素直に受容しきれない様子です。

その際、部下から「自分は同僚の立場で、今度の会議で営業方法に関する相談を投げかけます。その際に、対象のベテラン社員にアドバイスを言ってもらい、望ましい発言があったら、上司が上手に拾って具体化させる方向に持っていってください。意見や議論が混乱し始めたら、その際は途中でサポートしてください」 と、事前に上司と作戦を練ってから会議に臨む形を取りました。(221ページより)

その結果、ベテラン社員も「自分が相談されて伝えたアドバイスをもとに、営業方法を変えていくことになった」ため、気持ちよく協力してくれたのだとか。

このように、「それぞれが役割を演じ切って成果を出す」ことこそが組織の存在する意味。したがって、対外的な活動だけでなく社内的な改善にもチームプレイを生かし、それぞれの持ち味を発揮すべきだということです。

そうすることによって、人間の強い欲求である「承認欲求」を満たすことができる点がポイントであるようです。(220ページより)

「働かないおじさん問題」に対処する際には、本人のみならず、上司、人事も責任や問題を自覚し、三位一体となって取り組む覚悟を持つことが重要だと著者は主張しています。そのためにも、ぜひ本書を活用したいところです。

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2021年10月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク